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第360話 指名

 目玉のイベントだけあって、観客席はすぐに満席となってイルカのショーが開演する。

 ショー自体は約三十分程度で終わる予定で、その後は昼食を取って魚介レンジャーのヒーローショーへ足を運ぶつもりだ。

 巧みに調教師がイルカを誘導しながら空中のフープを潜り抜けて多彩な芸を披露して行く度に観客席からは驚きの声と拍手が沸き上がる。


「凄いわね。テレビとかで見るのとは違って、生で見ると迫力があるわ」


「ええ、確かにそうですね」


 凛がイルカに釘付けになりながら、傍にいる時雨に声を掛ける。

 時雨もそれに同意すると、モニター越しで調教師の一人が観客席にいる客を指名する。


「そちらの可愛らしいお嬢さん。こちらの舞台に上がって来てもらってもいいですか?」


 モニターには時雨が映り込み、どうやら超教師が指名したのは時雨だ。

 可愛らしいと表現する調教師に対して、時雨は一瞬自分の事だと分からなかった。

 設置されている全てのモニターには時雨が映し出されており、観客席からの視線が時雨に集中する。


(私か……)


 咄嗟に席を立つと、近くにいた係員らしき人物に誘導されて時雨は緊張した足取りで中央の舞台へ向かう。

 絶対、後で加奈がこれ見よがしに可愛らしいお嬢さんをネタにするのは安易に想像ができた。


「それではこちらの可愛らしいお嬢さんには私のお手伝いをやっていただきましょう」


 マイク越しで超教師の一人がそう言うと、ビニール手袋と小さなバケツを時雨に手渡す。

 バケツの中身はイルカの餌である小魚が入っており、どうやらこれをイルカに食べさせるようだ。


「では準備が整いましたら、私の合図と共にバケツから餌を空中へ放り投げて下さい」


「わ……分かりました」


 超教師が時雨に段取りを伝えると、時雨は頷いて答える。

 まずは調教師が見本としてバケツから餌を取り出すと、イルカが空中で餌をキャッチして波飛沫が立って観客席を沸き上がらせる。


(なるほど、あんな感じか)


 要領が掴めたところで、今度は時雨も実践に移る。


「それでは行きますよぉ」


 超教師が合図を送ると、時雨はバケツから餌を取り出す。

 すると、静寂の空気は一変して大きな声が響き渡る。


「頑張れ! 時雨ちゃん」


 香の声援だ。

 時雨は意識がそちらに持って行かれると、餌を投げるタイミングが少々ズレてしまった。


(まずい……)


 思わぬアクシデントに時雨は失敗したと思ったが、そこは訓練されたイルカだからだろうか餌は無事にイルカがキャッチして成功を収める。

 そして何事もなかったかのように観客席が再び沸き上がる。

「ありがとうございます! お手伝いしてくれた時雨ちゃんにも惜しみない拍手をお願いします」


 超教師がマイク越しで感謝を述べると、全てのモニターには時雨が映り出されながら顔を赤く染めていた。

 香が名前を告げたおかげで余計に恥ずかしさが倍増してしまった。

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