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第357話 魚介レンジャー②

「我こそはイカ男爵! ここで会ったが百年目、今日こそはお前達魚介レンジャーを海の藻屑にしてやるゲソ」


「きゃー、助けて! 魚介レンジャー」


 イカ男爵と名乗る怪人が名乗りを上げると、魚介レンジャーに進行役の女性が助けを求める。

 台詞の間合いや演技は手慣れた様子で、子供達もそれに惹かれて熱心に魚介レンジャーに声援を送っている。


「頑張れ! 魚介レンジャー」


 子供達に混じって、香も負けじと声援を送っている。


「まっ、最後は正義が勝つってシナリオだろうから、先が見える展開は少し退屈ねぇ」


 そんな香を加奈が水を差すような事を言っていると、イカ男爵が部下達に号令を下して魚介レンジャーに襲い掛かる。

 苦戦しながらも、魚介レンジャーは次々と技を繰り広げて怪人の部下達を蹴散らしていくと、イカ男爵が人質の女性を盾にする。


「おっと、この人間がどうなってもいいでゲソか?」


「くっ! イカ男爵、卑怯だぞ」


 リーダーのマグロレッドが怪人のやり口に非難すると、仲間のレンジャー達も手が出せずに人質を解放するように説得を始める。

 当たり前だが、そんな説得に耳を貸すような怪人ではなく、魚介レンジャーは窮地に立たされる。


「会場の皆! 魚介レンジャーに力を貸してあげて」


 突然、進行役で人質の女性が観客席の子供達に向けて言葉を投げ掛ける。

 どうやら、魚介レンジャーに魚介パワーを送るために特別な歌を歌って欲しいとの事だ。

 その歌は先程スタッフから受け取ったチラシに歌詞が刻まれていた。


(これを歌うのか……)


 特設ステージから独特なBGMが流れ始めると、子供達は歌詞に沿って歌い始めた。

 殆どの子は歌詞を見ないで歌える子ばかりの中で、香はチラシの歌詞を見ながらカラオケで培ったその美声を惜しみなく披露する。

 突出したその美声は結構目立ってしまい、子供達や特設ステージで演じている魚介レンジャー達の目にも止まった。


「くっ! 俺は真っ直ぐで純粋な子供達の声は苦手なんだゲソ」


 狼狽えるイカ男爵の動きが鈍ると、進行役の女性を手放して隙が生じる。

 魚介レンジャーはここぞとばかりに必殺技を繰り出すと、それを受けたイカ男爵は派手に倒れる。


「む……無念でゲソ」


 そして、イカ男爵から派手な爆音が鳴り響く。

 どうやら、魚介レンジャーが見事に勝利を収めたようだ。


「皆のおかげで悪の怪人を倒す事ができた! これからも魚介レンジャーの活躍を見ていてくれよな」


 リーダーのマグロレッドが締め括りの言葉を観客席に送ると、先程のBGMが再度流れて特設ステージの奥へ退場して行く。

 一連の催しが終了すると、香は興奮気味で語り掛けてくる。


「魚介レンジャーはカッコよかったね」


「やれやれ、香のカッコいいと普通の女子高生が抱いているカッコいいはベクトルが絶対違うわね」


 加奈が呆れた様子でいると、満足して楽しめたのならそれでいいと時雨は思う。

 元々、前世が少年だった影響も色濃く反映されているのだろう。


「この後はイルカのショーが始まるらしいから、そろそろ待ち合わせの場所まで行こう」


 時雨が時計を確かめると、約束の時間が迫っている。

 時雨達が席を立とうとすると、行く手を阻むように先程の特設ステージで人質役だった女性が声を掛けて来た。

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