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第352話 精一杯生きる

 一時間後、キャスティルは滞りなくシェーナを連れて元の異世界へ戻って行った。

 明朝には雨も上がり、空には雲一つない快晴になるだろうと天気予報は伝えていた。


「帰りの運転は大丈夫?」


「大丈夫よ。おかげで運転も少し慣れたからね」


「それならいいけど、くれぐれも安全運転をお願いするよ」


 ここへ来るまでに高速道路を走って自身が付いた柚子だが、心配性な時雨は念入りに安全運転を心掛けるように促す。

 柚子の運転を疑う訳ではないが、さすがに高速道路で事故を起こして、また異世界転生を繰り返すのは御免だ。


「事故で死亡しましたら、私の通常担当である仕事へ移らないといけませんので、どうかそうならないようにくれぐれもご注意下さい」


「やっぱり今度こそ、前世の記憶を真っ新な状態で転生させられるのですか?」


「ええ、そうなります。巷で流行りの異世界転生は絶対ありません」


 本職の女神であるミュースが断言するのだから、間違いないだろう。

 一部の例外を除いて、チートもなければ、ステータス画面もない一般人な人間や他種族に転生すると締め括る。

 本来、それは時雨達も適用させられる筈であった。


「来世も時雨の困った顔を拝みたかったけど、それは叶わない夢か」


 しんみりした様子で加奈が呟くと、悪戯好きな加奈にしてみれば結果的に楽しみが一つ減ってしまった。

 皆との記憶がなくなってしまうのは残念であるが、今の時雨達は自然の摂理から外れた存在である。痛い思いをして強制的に記憶を消されたりする事態は避けられただけでも運が良かったのかもしれない。


「どうか今の人生を精一杯生きて下さい。そのためにも我々は時雨さん達に最大限の支援をするつもりです」


 ミュースが時雨達に一礼すると、女神からのお願いを全うする覚悟はある。

 時雨自身も慣れない部分は未だにあるが、今の生を諦めたりはしていない。

 昔は自分だけ異世界転生して、警護の対象であった姫を死なせた自責の念に駆られて自殺を考えていた時期もあった。

 今思えば、思い留まって正解だったと心の底から安堵している。

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