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第351話 暫しの別れ

 その日の夕方に待機命令は解除されて、時雨達は自由の身となった。

 結局、暴走した原因を訊ねても教えてくれなかった。


「明日の帰る支度は整えておけよ。それと悪いが、予定より早くシェーナはこのまま私が元の世界へ送り届ける」


 キャスティルがシェーナを元の異世界へ連れて帰ると告げると、一時間の間に荷物をまとめておけと言い残して部屋を出て行った。

 シェーナは軽く頷いて了承すると、自分の荷物をまとめて帰る支度を始める。


「もう少し一緒にいたかったけど、残念だね」


「仕方ないさ。それに土日の週末にはまたこちら側に来れるし、その時にまた会おう」


 時雨は名残惜しそうにシェーナへ言葉を送ると、シェーナは片手を差し出して時雨と固い握手を交わす。

 シェーナの言う通り、女神見習いの立場で土日の二日間はこちらで活動できるのだから、またすぐに会える。


「異世界に戻っても、山賊やオークに襲われないように気を付けなさいよ。『くっ、殺せ!』なんて場面はR指定の小説や同人誌の類で十分なんだからね」


「それは……うん、気を付けるよ」


 加奈がシェーナの背中をバンバン叩いて見せると、シェーナは思わず苦笑いを浮かべてしまう。

 この世界とは違って賊や魔物が徘徊している異世界なのだから、言葉はアレだが加奈なりにシェーナを気遣って心配してくれている。


「加奈もちゃんと宿題片付けないと駄目だよ。そうじゃないと、おっかない女神様に追い詰められて『くっ、殺せ!』って状況になっちゃうよ」


 シェーナも加奈の気持ちが十分伝わっているようで、冗談を交えながら握手を交わす。


「こっちにまた来たら、料理や異世界について色々と教えてね。シェーナの寝床も用意して待っているわ」


「ありがとう。次に会えるのを楽しみにしているよ」


 凛が別れの挨拶をすると、シェーナは順番に凛と握手を交わしていく。


「病気や怪我には気を付けるんだぞ。次に会ったら、女騎士だった時の話をまた聞かせてくれ」


 紅葉もかつては女騎士だった経緯があり、シェーナの女騎士時代については興味津々だった。

 シェーナ自身、女騎士時代にあまり良い思い出はなかったが、その苦労があったおかげで今日があると確信している。


「次に会うまでに、シェーナは女子に対してもう少し免疫力を高めようか。そうだなぁ……ここにいる全員とお風呂に入っても問題ないぐらいにね」


「それは……難しいかも」


 柚子が無理難題をシェーナに押し付けると、困惑した顔でシェーナは参ってしまう。

 大変な課題を課されたなと時雨は他人事のようにしていると、柚子は時雨に振り返って忠告をする。


「言っておくけど、時雨もよ。あんたは女子高に通っているんだから、女子の一人や二人ぐらい口説いてきなさい」


「ええっ、そんなの無理だよ」


「姉と母親の立場から、時雨の将来は心配なのよ。好きな人ができたら、ちゃんとお嫁さんを私に報告するように」


 シェーナより無茶苦茶な課題を押し付けられた時雨は頭を抱えてしまう。

 前世で嫁を紹介する事もなく、親不孝な立場であったのは理解している。

 今も嫁を紹介して安心させろと言わんばかりに、柚子は女同士でも一向に構わないらしい。

 何故だか、香や凛はそわそわした様子になって時雨に対する視線が熱い。


「時雨はムッツリだから、今の私みたいなダークエルフのおっぱいが大きいタイプが好みよねぇ」


 加奈が胸を揺らして時雨の頭を撫でると、時雨は「何言ってるんだよ」と突っぱねてしまう。


「心配はなさそうかな」


 その様子を柚子が傍から見ていると、時雨の将来は大丈夫だろうと思わずにはいられなかった。

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