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第346話 クイズ②

 問題を読み上げた直後に、先程の一方的なカウントダウンが始まる。

 限られた時間の中で、時雨はこの場から下手に逃げるより問題を解いた方が安全かもしれないと瞬時に判断する。

 頭の中で日本の最西端の島について思考を巡らせるが、名前が全然出てこない。


(まずい……)


 解答時間がなくなる寸前、時雨はダメ元で島の名前を挙げようとすると、時雨の代わりに誰かが解答をする。


「与那国島よ」


 声の正体は凛であった。

 時雨の傍に凛が駆け寄ると、タキシードの男は淡々とした口調で拍手を送る。


「正解です。おめでとうございます」


 どうやら、問題は無事に正解したようだ。

 その隙に凛は時雨の手を引いて、ここから一番近いミュースやシェーナがいる食堂へ逃げようと試みる。

 凛もタキシード男が普通の人間ではない事を察知して、助けを求める選択肢を選んだ。

 着ぐるみを着用しているせいで、時雨は思うように走る事はできずに焦りが募る。


「時雨、もう少しで食堂よ」


 凛が指し示す先には食堂の看板が見える。

 時雨の歩幅に合わせてくれているおかげで、どうにか転倒する事態は避けられている。

 時雨は背後から追跡されているのか気になっているが、着ぐるみの状態ではそれも確かめられない。


「問題です」


 タキシードの男の声が前方から聞こえて来る。

 二人は食堂まで目と鼻の先に位置する一歩手前で足を止めると、いつの間にか二人を追い抜いてタキシードの男が道を塞いでいたのだ。

 二人に構わず、タキシードの男は先程のように問題文を読み上げる。


「日本の歴代内閣総理大臣で第一代内閣総理大臣は伊藤博文ですが、第三代内閣総理大臣を答えなさい。解答時間は五秒です」


 問題文を読み終えると、カウントダウンが始まる。

 恥ずかしい話だが時雨は日本史についてあまり得意分野ではないので、この問題も解答できる自信がない。

 頼りは凛なのだが、凛は迷いなく解答を提示する。


「山縣有朋よ」


「正解です。おめでとうございます」


 先程と同じく機械的な動作で拍手を送るタキシードの男をすり抜けると、凛はそのまま時雨と共に食堂へ入る事に成功する。

 幸いにも店内には客がいなかったので、騒ぎにならず奥の厨房へ駆け込む。


「ど……どうしたの?」


 食器の整理をしていたシェーナが二人に気付くと、作業を中断して駆け寄って来る。

 遅れてミュースも食材のチェックをしていたところに、二人の姿が見えて様子がおかしい事に気付いた。

 時雨は頭に被っている着ぐるみを脱ぐと、凛と共にタキシードとシルクハットを被った怪しい男に追われている事を伝える。


「変質者か薬物中毒者か……どちらにしても、もう大丈夫ですよ」


 ミュースは二人を安心させるために優しい言葉を投げ掛けると、この事をすぐにキャスティルへ報告する。

 とりあえず、厨房内にミュース特製の結界を張り巡らせて安全を確保する。

 キャスティルがここへ到着する前にミュースが相手を説得するなりして事態を鎮静化しようと試みるが、タキシードの男は一向に食堂に姿を見せない。


(諦めたのかな……)


 ミュースの話によれば、この結界は並大抵の衝撃ではビクともしないので賊の侵入は心配ないとの事らしい。

 それを聞いて二人は安堵すると、それは束の間の出来事だった。


「問題です」


 タキシードの男の声だ。

 厨房内から確かに聞こえたのだが、まさか結界を破って侵入したのだろうか。

 この事態に一番驚いているのはミュースだ。


「そんな……結界は破られていないのに!」


 その答えはすぐに解けた。

 時雨の影が立体的に大きくなると、次第に影はタキシードの男に変化してしまったのだ。

 ミュースはシェーナに二人を任せてタキシードの男と対峙すると、嫌な空気が周囲を立ち込めていた。

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