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第341話 姉妹丼?

 二人は抱き合ってお互いの温もりを確かめ合っていると、遠目でミールの背中を流しているシェーナは感動的な親子の再会に心を打たれていた。


「ミール様はこの事実を知っておられたのですね」


「まあね。シェーナ君や時雨君達には辛い思いをさせてしまったね」


 しんみりした様子でミールが語る。

 本来なら、前世の記憶がない状態で転生する筈だったが、女神の手違いがきっかけで異世界転生者のシェーナや時雨達は苦労させられた。

 時雨達はミールを含めた女神達を責めるような真似はしなかったが、シェーナは元凶を作った女神に辛く当たった過去がある。


「さて、今度はシェーナ君の背中を流してあげよう」


「俺は……いや、私はいいですよ。そんな事をさせてしまったら、ミール様を慕っている女神様に何をされるか分からないので」


「ああ、スノーの事なら平気だよ。彼女は今頃、どこかの次元で魔神将を狩る仕事をこなしているからね」


 背中を流し終えたミールはシェーナを強引に座らせて背中を流そうとする。

 正直、ミールに背中を流してもらうのは畏れ多い割合よりも、ミールを信奉する部下の女神の存在が気掛かりだった。


「シェーナ君の肌はスベスベで綺麗だね」


「それはどうも……」


 ミールの手がシェーナの背中を直で触る感触が伝わると、何とも言えない緊張感と恥ずかしさが込み上がって来る。

 よく考えれば、女性に背中を流してもらうのは初めての経験であった。

 ミールはシェーナの背中を流し始めると、鼻歌交じりで上機嫌な様子だ。

 しばらくミールに背中を預けていると、そこに温泉場の扉が開く音がして、長耳をピンと立てた加奈が入って来た。


「ムッツリ野郎共! ダークエルフの美少女である加奈様が背中を流してしんぜよう」


 身体にタオルも巻いた加奈が声を上げて時雨とシェーナに対して向ける。

 どうやら、二人が温泉場に入るのを予め察知していたようだ。

 慌てふためいた二人を予想していた加奈だったが、時雨は柚子と抱き合っており、シェーナはミールに背中を流してもらっている光景が映り込み、予想を大きく外した。

 招かれざる客の登場にその場の空気は一変する。


「時雨……あんた、柚子さんと裸で何してるのよ」


 震えた指を差しながら狼狽した加奈が時雨に訊ねるが、返答は何も返ってこない。

 長年一緒だった親子の絆を確かめ合うように抱き合っている二人は事情を知らない加奈にとって異質な光景に見えている。


「これを絵にしたら、タイトルは姉妹による禁断の愛……百合に覚醒した姉妹丼ってところかしら」


 R指定にされそうなタイトルを口にしながら加奈は興奮している。

 そして時雨は我に返って柚子と距離を取ると、周囲を見渡してミールと加奈の存在にやっと気付いた。


「何で加奈とミールさんがここに……」


 気恥ずかしい気持ちで時雨が訊ねると、加奈は冷静になって答える。


「お邪魔かなって思ったけど、二人がそんな関係だったとは知らなかったからさ。女神様の視点ではアリなんですか?」


「別に問題ないさ。むしろ、本音をぶつけ合って素直な気持ちを伝えられてよかったと思っているよ」


 少々気まずそうに加奈が呟いて、厳格な女神の立場であるミールに二人の関係は不純ではないのか訊ねるが、ミールはとくに問題視していない。


「マジですか……姉妹丼はアリなんですね」


「はて、姉妹丼?」


 信じられないと言った様子で加奈が若干困惑気味でミールを一瞥する。

 ミールも姉妹丼が何を意味しているのか、理解が追い付いていない。

 二人の勘違いを紐解くように、シェーナは間に入って説明する。

 すると、説明を聞き終えた加奈は柚子に申し訳ない気持ちで一杯になり、その場で土下座をするのだった。

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