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第336話 花火②

「蓋を開けたら、別に普通だよ。女神様の手違いで偶然にも異世界転生しただけだからね」


「そんな事ないわよ。時雨は騎士、加奈はダークエルフ、凛先輩はお姫様、紅葉先輩は女騎士って時点で豪華なパーティーだと思うけどね。時雨と香が血を分けた兄弟で今は幼馴染、時雨のお姉さんに至っては……」


 理恵は時雨達の経歴について興奮しながら喋っていると、途中でキャスティルが背後に回って理恵の口を塞いだ。


「余計なお喋りはいいから、あのダークエルフを止めに行って来い」


 キャスティルが理恵を時雨から引き離すと、両手に花火を持って曲芸を披露している加奈のところへ追いやる。


(お姉ちゃんがどうしたんだろう……)


 柚子も異世界転生しているのは承知しているが、前世が何者なのか時雨は知らない。

 本人もそれについては口を閉ざしているので、深く詮索はしないでいる。


「うわ! ねずみ花火に引火した」


 加奈は手を滑らせて、置いてあったねずみ花火の袋に火が付いた。

 爆竹のように激しく火花が散って、複数のねずみ花火がその場で回転を始めると、楽しい花火大会は阿鼻驚嘆な悲鳴が響き渡る。

 しばらくして、全てのねずみ花火は鎮火して収まると、その場でキャスティルが加奈を正座させて説教を始めた。


「ふざけて遊ぶからこんな目に遭うんだ! 火傷で怪我をしたらどうするつもりだ」


「す……すみませんでした」


 正論を並べられて、加奈は身を縮めて反省をする。

 幸いにも怪我人はいなかったので、気を取り直して花火を楽しむ。


「黙っていれば美人なダークエルフなのに、お転婆なところはやっぱり加奈っぽさがあって損してるなぁ」


「何言ってんのよ。じっと押し黙っていたら身体がムズムズして健康に悪いわよ」


 理恵が意地悪っぽく加奈と花火を並べて語り出す。

 イベント企画となれば、テンションが上がって場を盛り上げるのが加奈の性格だ。

 盛り上げ過ぎて、注意されるのもしばしばあるので今更感は否めない。

 やれやれと時雨も新しい花火を手にしようとすると、すぐ隣から時雨に花火を手渡そうとする小さな手が視界に入る。


「ほら、どうぞ」


「凛先輩、どうもありがとうございます」


 時雨は凛から感謝の言葉を述べて花火を受け取る。

 よく見ると、凛とお揃いの花火だ。

 火種を起こして二人は綺麗に輝く花火を見つめながら、凛はポツリと呟く。


「この前は肝試しが始まる前に気絶してイベント不参加だったけど、今日はこうして皆と花火を囲んで楽しめてよかったわ」


「喜んでもらえてよかったです。まだまだ色々な種類の花火を用意してますから、存分に楽しんで下さい」


 今回は凛も気兼ねなく参加できて、時雨は心の底から嬉しそうに語る。

 二人の花火は小さく火花を散らしながら、凛は時雨の肩に寄り添って見せる。


「り……凛先輩?」


「二人でこうして眺める花火は一段と幻想的に映るわ。ずっと、この時間が永遠に流れていればいいのにね」


 凛が顔を赤く染めて良い雰囲気に浸っていると、時雨も自然とそれに釣られて顔を赤く染める。

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