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第333話 展望台②

 展望台の頂上までやって来ると、一面の海を背景に美しい夕日が沈もうとしている。

 人気のスポットだけあって、立地条件は申し分ない。


「綺麗ね」


「ええ、とても……」


 凛は夕日を眺めながら、時雨の腕にしがみ付いて呟く。

 時雨もその場の雰囲気に呑み込まれて、自然と言葉を発する。


「夕日もいいけど、僕は時雨ちゃんが一番輝いて素敵だよ」


 二人の間に入って香がスマホを取り出して、時雨を被写体に選んで写真に収めると、スマホには凛々しい時雨の姿が写っている。


「ちょっと……そんな写真はいいから、私より風景を撮りなよ!?」


「照れ隠ししている時雨ちゃんも頂きだね」


 新たにシャッターが押されると、今度は一転して慌てふためく時雨の姿が写り込む。

 予想はしていたが、展望台の頂上は賑やかな雰囲気に包み込まれる。


「時雨達はお子ちゃまねぇ。私ぐらいの大人な女性にもなれば、黄昏の光が差し込む夕日を目の当たりにしたら情緒あふれる景観に感動しちゃうわ」


 加奈は目を瞑って身体全体で自然を感じ取るようなポーズを取って見せる。

 ダークエルフの彼女なら説得力もあるが、紅葉が展望台の売店で時雨達のためにフランクフルトを買って加奈の分を手渡そうとする。


「何だ、お腹が減っていたのか」


「違いますよ! 私をどこかの腹ペコ女神様と一緒にしないで下さい」


 加奈は憤慨するフランクフルトを払い除ける。

 意外であるが、紅葉もミールやキャスティルとまでは行かないまでも食欲旺盛な女子高生だ。

 前世が女騎士であった彼女であるが、現在は風紀委員と剣道部で活躍していた経緯がある。

 体力を必要とする生活に慣れた紅葉は「そうなのか、すまんな」と払い除けられたフランクフルトを手元から放してしまったが、結果的に背後から現れた女神の口に入った。


「おやおや、美味しい出迎えだねぇ」


 呑気な声で空中に舞ったフランクフルトをペロリと平らげたのはミールだ。

 その横にシェーナが神妙な顔でその様子を窺っている。


「やっと来たか。話は無事に終わったのか?」


「まあね」


 備えられたベンチに腰掛けているキャスティルがミールに訊ねると、ミールは軽い返事で答える。

 シェーナと少々話があるから、先に展望台へ向かってくれとミールに言われていたが、どうやら二人の話は済んだようだ。


「キャスティルには負担を掛ける結果となるかもしれないけど、後の事はよろしく頼むよ」


「お前に頼まれるまでもない。面倒事は慣れているからな」


「すまないね」


 キャスティルは懐から煙草を取り出して咥えると、髪を掻き分けて面倒臭そうに了承する。

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