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第330話 二人の関係

 注文した食事が並べられると、ミールとキャスティルの席には一際多く皿が積まれていく。

 それを呆然と見物しながら、時雨は財布の中を気にしてしまう。


「あの……お代は如何程に?」


「お金の心配はご無用ですよ。我々が無理して呼び付けましたし、どうぞ好きなだけ召し上がって下さい」


 招待された客人を持て成す心意気は感謝するが、それでも限度はあるだろう。

 水と油のような関係性である二人の女神は時雨達を一望しながら、不思議そうにしている。


「どうしたんだい? 冷めない内に食べた方がいいよ」


「食べないなら、私が貰うぞ」


 この時ばかりは息があったように皿に乗った料理が女神達の胃袋へ送られていく。

 時雨達も自分達の料理を死守しようと手を付け始める。

 一方、もう一人の女神であるミュースは食前の前に神への祈りを捧げている。

 そんなミュースを横目にミールとキャスティルが無慈悲にもミュースの皿を空にする。


「お祈りご苦労」


 口に料理を運んだまま、呑気な声でミールから労いの言葉を賜るミュース。


「お前はもう祈られる側だろ」


 呆れた声でキャスティルはツッコミを入れて、タッチパネルで遠慮なしに追加注文をしていく。


「あっ……ご飯がなくなっている」


 祈りに集中していたミュースはいつの間にか皿から料理が消えているのに気付くと、周囲を見渡して現状を理解できないでいる。


「あの二人がかっさらって行きましたよ」


 時雨が二人の女神を指差すと、ミュースは致し方ないと割り切っている様子だ。

 気分を変えて、ミュースも追加注文をして新しい皿が届くまで雑談に興じる。


「インタビューはどうでしたか?」


「私は色々と聞かれましたが……答えられる範囲で回答しました」


 時雨はすぐ隣にいる理恵の顔を気にしながら答えて見せる。

 秘密にしていた前世について真実を知られて、理恵がどのような反応をするのか怖かった。

 それは香も同じで、自身が幼い男の子だった事実を黙秘せずに喋ったのだ。

 香と理恵は高校でできたギャル友達で、仲はとても良好な関係であり、一歩間違えれば築き上げた友情を壊してしまうかもしれない。


「僕も理恵に本当の事を喋れてよかったと思ってる。こんな僕を受け入れてくれて本当に……ありがとう」


「ほら、泣かないの。香の前世が男の子だったとしても香は香だもの。それは時雨も同じよ」


 理恵は香の頭を優しく撫でると、どうやら二人の関係性は不変的なようだ。

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