第33話 占い
翌日、時雨は制服に着替えて台所で朝食の仕度を整えていた。
炊飯器のご飯が炊けると、二人分の茶碗にご飯を装って、鍋に火を通した味噌汁もお椀に装っていく。
寝室から目覚まし時計が鳴り響くと、時雨は溜息をついてベッドに潜っている凛を起こそうとする。
「先輩、朝ですよ。ご飯も出来上がっていますので、早く起きて召し上がって下さい」
「うう……あと十分」
このやり取りは十分前にもやったばかりで、十分後に目覚めし時計が鳴るようにセットしていた。
あまり期待はしていなかったが、凛は時雨の予想通り布団に潜って起きる気配がなかった。
このままでは朝食も冷めて、学校にも遅刻してしまうので、時雨は布団を剥ぎ取って強硬手段に打って出る。
「ほらほら、もう約束の時間が過ぎましたよ。いい加減に起きてくれないと、食事も片付きません」
時雨が手拍子を打つと、凛はやっとベッドから起き上がって眠そうな眼を手で擦って洗面所で顔を洗う。
時雨は食卓に朝食を並べると、テレビを付けてニュース番組にチャンネルを合わせる。
丁度、今日一日の運勢を占う番組のコーナーが始まると、時雨の運勢は最悪だった。
「友人関係にヒビが入るかもしれないのでご用心。友達には嘘を隠さず、素直になると良いでしょう」
天気予報を見るつもりが、余計な事を聞いてしまったと時雨は後悔する。
占いはあまり信じていないが、良い結果だとそんなものかと軽く流すが、悪い結果だと一瞬どんよりした気分になってしまう。
(友人関係ねぇ)
時雨が腕を組んで考え込むと、凛は制服に着替え終えて食卓に姿を現した。
「おはよう。待たせて悪かったわね」
「おはようございます。じゃあ、いただきましょうか」
二人は向かい合って食卓のテーブルに座ると、朝食に手を付け始める。
テレビの占いコーナーは最後に凛の運勢が発表される。
「新しい事に挑戦すると吉。新たな発見が生まれて充実した一日を過ごせるでしょう」
凛は占いの結果を聞くと、嬉しそうにする。
「今日はツイているわね。時雨はどうだったの?」
「私はあまり良くないですね」
簡単に結果を述べると、天気予報が始まって午前中は晴れ間であるが、午後から雨の予報だ。
できれば、放課後にマルとチビの二匹を飼い主に引き渡すまでは晴れていてもらいたいところだ。
気分的な問題であるが、前世で崖から転落した時の天候は雨が降り始めてシェラートと永遠の別れとなってしまった。
現在は偶然にもお互い転生して出会う事ができたが、時雨にとって雨は苦手な天候である。
「私と一緒にいれば、プラスとマイナスで打ち消し合うわよ。だから、今日の占いは気にする事はないわ」
「ありがとうございます。それより、朝食を早く食べて食器を片付けたら学校へ行く準備を整えましょう」
凛は時雨を占いの結果を気遣ってくれると、時雨は礼を言ってテレビの画面を消した。




