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第321話 面会

 翌日、時雨達は私服に着替えて旅館の駐車場前に集まっていた。

 これから米軍関係者と面会すると言うのに相変わらず、ミールは自前のジャージ姿で近場のコンビニへ行くスタイルだ。


「ちょっと、時雨……」


 加奈が時雨に小声で耳打ちすると、心配そうな表情でこちらを窺っている。


「どうしたの?」


「いや、ミールさんから今朝方に事情を知って混乱気味よ。だって、ポッキーゲームの途中で私は気絶して今朝目覚めると米軍関係者と面会って普通ありえないわよ」


 加奈の言いたい事は分かる。

 時雨と凛以外の女子達も不安そうな表情になり、落ち着かない様子だ。


「下手したら、私達って消されたりしないかな……」


「そんな映画や漫画みたいな展開はないよ。私達は消されるような悪い事を何もしてないし、まあ、加奈は普段から悪戯ばかりしているから分からないかもなぁ」


 仮に本当に消すつもりなら、わざわざ呼び付けたりしないだろう。

 時雨は少し意地悪な回答をすると、「もう、時雨の馬鹿!」と加奈は顔を膨らませてしまう。


「お前等を消すつもりなら、我々に対する宣戦布告とみなすだけだ。それについては相手側も重々承知している筈だ」


 キャスティルが物騒な事を時雨達の前で堂々と述べる。

 それが冗談ではなく、本気であるのはキャスティルの性格から窺える。


(大丈夫だよな……)


 時雨も一連のやり取りをしている間に不安が付き纏う。

 何せ米軍相手に襲撃した過去を持つキャスティルは少しでも相手が不審な動きを見せたら、躊躇なく攻撃に転じてもおかしくない。

 それは時雨以外の女子達も同じ思いのようで、穏便に済ませたいところだ。


「ははっ、大丈夫だよ。別に戦場へ赴く訳じゃないから、普通に面会して世間話をするだけさ」


「そうですよ。皆さんが想像するような危険な事は何もありませんからご安心下さい」


 ミールが和やかな表情で言葉を投げ掛けて時雨達を安心させようとすると、ミュースもそれに乗っかって説得する。

 残念ながら、昨夜の王様ゲームでポッキーゲームを立案したミールと阿鼻驚嘆な地獄絵図を作り出したミュースに説得力は皆無であった。


「おっと、到着したようだな」


 そうこうしている内に待ち合わせの時間ピッタリに乗用車三台が時雨達の前に止まった。

 先頭車両の運転席から黒服の男が姿を見せると、時雨達を一瞥して挨拶をする。


「お待たせしました。どうぞこちらにご乗車下さい」


「おい、我々をどこへ連れて行く気だ?」


「詳しい場所については申し上げられませんが……」


 キャスティルが目的地について訊ねると、黒服の男は言葉を選んで丁寧に返答しようとしたが、それが気に入らなかったキャスティルは黒服の男の胸倉を掴んでしまう。

 悠々と片手で黒服の男を持ち上げると、残りの二台の運転席に控えていた黒服の男達が慌てた様子で姿を現す。

 黒服の男達が懐から何か取り出そうとする仕草を確認すると、キャスティルに胸倉を掴まれた黒服の男はそれを制止しようとし、ミールはキャスティルに解放するように促す。


「落ち着きなさい。キャスティル、君らしくないよ」


「ちっ……」


 軽く舌打ちしてキャスティルはミールの声に応じる。

 解放された黒服の男はその場で尻餅を付いてすぐに立ち上がると、他の黒服の男達を持ち場の乗用車へ下がらせる。


「私の部下が手荒な真似をしてすまなかったね。怪我はないかい?」


「いえ、大丈夫です。目的地については規則で申し上げられませんが、危険な場所ではありません」


「それだけ聞ければ満足だよ。我々の案内をよろしくね」


 ミールが黒服の男と話を付けると、時雨達を乗用車へ乗るように促す。

 各乗用車には最低一人の女神を配置するように乗せると、乗用車は目的地に向けて走り出す。

 運転席と後部座席の間には分厚い仕切りが敷かれて、窓ガラスも特注品のようで外から景色が見えない仕様になっている。


(無事に過ごせますように……)


 時雨は今日一日無事に過ごせるように静かに祈った。

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