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第32話 暗闇のベッドで

 リビングの机で凛は時雨に勉強を教えていると、時計は十一時を回ろうとしていた。


「あら、もうこんな時間なのね。そろそろ寝ましょうか」

「そうですね。明日も学校はありますし、朝が辛くならない内に布団へ入りましょう」


 凛は参考書を閉じて切り上げると、時雨も賛同してノートを閉じた。

 寝室には凛のベッドが一つあって、時雨は布団を借りて床で寝るつもりでいる。


「先輩、布団をお借りしてもいいですか?」

「何言ってるの。布団ならそこにあるじゃないの」


 凛はベッドに潜ると、時雨を手招きする。

 ベッドの横には凛とデートの時にゲームセンターで取ったぬいぐるみが置かれている。


「布団がないのでしたら、リビングのソファーで休ませてもらいますね」


 時雨は寝室を出ようとすると、凛は慌ててベッドから飛び起きて時雨を引き止める。


「一緒に寝ましょうよ。二人っきりの夜を楽しみながら朝を迎えるのも悪くないかもよ?」

「先輩は朝が弱いと仰っていたのに、二人で夜を楽しむ余裕はないでしょう」

「時雨となら別よ」


 甘い物は別腹みたいに言われて時雨は困惑する。

 ベッドは二人で寝るには狭いし、かつての主人と一緒のベッドを共にするのは抵抗がどうしてもある。

 それらしい理由でやんわり断っても、凛は引き下がらずに実力行使に打って出る。


「ええい、先輩の私がOKなんだからベッドに入りなさい」


 凛は時雨を抱えてベッドに押し倒すと、部屋の明かりを暗くする。


(どうしてこうも私の周りの女性は強引なんだ……)


 そんな事を考えながら、暗闇の中で時雨は大人しくして枕で横になる。

 すぐ隣に凛がいる事を意識しないでいると、凛は時雨に語り出した。


「お風呂も楽しかったけど、やっぱり泊まりと言ったら一緒の部屋で一晩過ごすイベントが一番よね」

「もう……子供みたいな事言わないで下さい」

「時雨の前だと、どうしても甘えたいのよ。普段の学校生活だと、学生の手本となるなるような存在でいなきゃいけないって重圧が圧し掛かって息が苦しかった」


 凛は本音を漏らすと、前世で一国のお姫様だった頃と変わらない姿勢で臨んでいた。

 それに加えて、自責の念に駆られて時雨のために生きようと強いらせてしまった責任もある。


「無理しなくていいんですよ。辛くて泣きたい時は私がきちんと受け止めてあげますからね」


 時雨は凛を諭すように言うと、暗闇の中で凛の背中に手を当てて優しく擦る。


「私も時雨が同じような時は必ず助けてあげるからね!」

「ありがとうございます。期待していますよ」


 凛が決意を表して約束すると、しばらくして寝息を立てた。


(その言葉だけで、私は救われます)


 時雨は目を閉じると、自然と笑みが浮かんで心が和らいでいくのが感じ取れた。

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