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第283話 肝試し②

「くだらん。肝試しなんて子供(ガキ)のやるお遊びだろ」


 第一声にキャスティルが新しい酒瓶を開けながら、不参加の意思を示す。

 実際お遊びと一括りにされても否定はできないし、仮に女神が肝試しをしたら幽霊やお化け側が肝を試されてしまうだろう。


「ミュースやシェーナ君は肝試しやりたいだろ?」


「夜の人気(ひとけ)のないところは危ないかもしれませんよ」


 ミュースは遠慮がちに進言すると、シェーナも頷いて賛同する。

 女神達だけなら問題ないが、一般人の時雨達にもしもの事があったら本末転倒だ。

 ミュースやキャスティルに与えられた任務の性質を考えたら、ミールの提言する肝試しは避けたいのが本音だ。

 乗り気じゃない女神達にミールは肩を落とすと、今度は標的を時雨に移す。


「時雨君、やろうよ」


 時雨の両手を掴んでミールは顔を近付けると、その熱意は凄まじい。

 そして畳み掛けるように、うるうる目にしながら懇願するので徐々に断れない空気を作って逃げ道を塞いでいく。


「じゃあ、少しだけなら……」


「さすが時雨君だ!? 話の分かる女子は大好きだよ」


 押し切られる形で時雨は賛同すると、上機嫌でミールは時雨の頬にキスをする。

 時雨のキスに香が嫉妬すると、肝試し自体は美味しそうなイベントなので賛同に回る。

 なし崩し的に二人が落ちると、凛や加奈も思案を巡らせて最終的に賛同し、紅葉と柚子も皆がやるなら私もやると言った感じで一気に賛同者が増える。

 こうなると、ミュースも必然的に参加しない訳にもいかないので、見習いの立場であるシェーナも参加する。


「キャスティルもやろうよぉ」


 ミールは子供が駄々をこねたように絡み出すと、それを無視しながらキャスティルは黙々と酒瓶を空にして不参加の意思を貫く。


「もしかして、お化けが怖いとか?」


「安い挑発には乗らん。私が一番恐ろしいと感じるのは際限のない人間の欲望だ」


 酒瓶に映った自身の顔を覗き込みながら、キャスティルは遠くを眺めるように呟いて答える。

 肝試しの参加の可否で聞くには重い言葉だ。

 同調圧力に屈しない今回のキャスティル相手ではさすがのミールも諦めたかと思ったが、次のミールの台詞で彼女の心は揺らぐ。


「特別ゲストにカフテラを召喚しようかと思ってたんだけどなぁ」


「……今は謹慎中だろ」


「私が特例で召喚するよ」


「意味もなくそんな事をすれば、上の連中が黙ってないぞ」


「意味はあるさ。だから、キャスティルも参加を頼むよ」


「ちっ……仕方がない」


 面倒臭そうに頭を掻いてキャスティルは立ち上がると、ミールの意図を汲んで参加を決めた。

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