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第282話 肝試し

 陽も落ちて、各々客室でくつろいだ後で門倉が用意した宴会場で夕食を囲んでいた。

 本当なら、女子達と囲まれて楽しく夕食を堪能する算段であった門倉だが、両脇の席にミールとキャスティルがいるおかげでお通夜状態だ。

 門倉は空いたグラスにビールを注ぐと、キャスティルのご機嫌を窺う事に徹していた。


「ささ、どうぞ」


「過剰な接待は受けねえよ」


 けんもほろろに突き放されると、不機嫌そうにキャスティルはグラスのビールを飲み干す。

 中間管理職の辛い立場だ。

 気を取り直して、門倉はミールの空いたグラスにビールを注ぐと困惑した声でミールは答える。


「私はアルコールが苦手だから、それはオーナーの君にあげるよ」


「た……大変失礼致しました! 代わりのドリンクを持って参ります」


 最悪だ。

 創造神である彼女の機嫌を損ねる行為は大企業の会長に失態をおかすようなものだ。

 ミールの機嫌次第では地球が墓標になってもおかしくない。

 リカバリーを図ろうとする門倉だが、近くにいたミュースが適切な対処に当たる。


「よろしければ、こちらのオレンジジュースをどうぞ。それと、お召し物の浴衣が先程のグラスから零れて汚れていましたので、後ほどこちらの浴衣に着替え直して下さい」


「ああ、ありがとう。これぐらいならすぐに乾くと思うから大丈夫だよ」


 ミュースからおしぼりを受け取ると、軽く濡れた箇所を拭き取って受け取ったオレンジジュースに舌鼓を打つ。

 彼女も中間管理職の女神であるが、この手のタイプの子は出世が早いと相場が決まっている。

 対して門倉はこの地に左遷させられた時点で出世コースから外されている身なので、今更取り繕っても結果は変わらないだろうが――。

 門倉は時計の針を確認すると、本来の仕事の時間だ。


「申し訳ありません。少々席を外させてもらいます」


「おや、気分でも悪くなったのかい?」


 突然の申し出にミールは門倉の体調を心配すると、門倉は一礼を済ませて宴会場を後にする。

 オーナーの立場から察するに急用の仕事が入ったのかと思ったが、ミールはオレンジジュースを飲み干して門倉の真意を見抜く。


「皆、肝試しをするつもりはないかい?」


 両手を叩いて手拍子すると、突然の提案を持ち掛ける。

 夏の風物詩と言えるイベントの一つだが、この場にいる殆どの者が直感として普通の肝試しじゃないのは安易に想像ができた。

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