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第279話 露天風呂③

 押し問答の末、自由奔放なミールは時雨に更なる色仕掛けを試して反応を楽しむが、彼女の性格を理解した時雨は目を逸らして華麗にスルーする。

 これが加奈だったら、長耳をモフって黙らせているところだが、相手は創造神だ。

 そもそも、人間を超越した存在である女神に弱点はあるのか。

 仮にあったとしても、本人が易々と教えてくれる筈もないだろうし、見極めるのは困難だろう。

 時雨はそれとなくミールを観察すると、異変を感じ取る。


「私の弱点を知りたいようだね」


 ミールはいつの間にか時雨の横に肩を並べると、心を見透かされてしまう。

 探られるのが気に喰わなかったのか、軽い口調は相変わらずだが言葉に圧が込められている。

 返答次第では何をされるか分からない恐怖が時雨に纏わり付く。

 すると、ミールは時雨の背中に手を添えて耳元で囁く。


「僕は時雨ちゃんの弱点を知っているよ。相手に攻められたら、受けに徹してしまうところだよ」


 今までと声色が違うので一瞬違和感を覚えたが、すぐに驚きへと変化する。

 喋り方や息遣いだけでなく、声質が香と全く一緒なのだ。


「香……ちゃん?」


 時雨は纏わり付いていた恐怖を押し退けて振り返って確かめようとすると、ミールの姿はどこにもなく、そこにいたのはタオルを身体に巻いた香がいた。


「ふふっ、まるで狐に化かされたような顔をしているね」


 香はそのまま時雨に抱き付いて見せると、それを拒否するように時雨は距離を取る。

 誰かが露天風呂に入って来た気配はなかったし、アルバイトの終業時間はまだ回っていない。それに露天風呂なら、仕事で描いた汗を洗い流すのに香一人だけではなく女性陣も一緒に入ろうって流れになるのは予想が付く。

 決定打になったのは長年二人で過ごした絆が目の前にいる香は別人だと告げる。


「幼馴染であり実弟だった子の姿になっても、時雨君を欺く事はできないか」


 香は意味深な言葉を吐くと、露天風呂から湯気が立ち昇り香を包み込む。

 そして、湯気から長耳が特徴的な加奈の姿が現れる。


「私にとって時雨は特別なの。男だった記憶があり、今は女の子として魂が調和している。男女の旨味が混ざり合った時雨はダークエルフにとって極上のスイーツよ」


 加奈は時雨の頬を舌舐めすると、長耳をピンと立てて夢中になる。

 この強引さは加奈と変わりないが、やはり偽者だ。

 長耳をモフって無力化しようと試みるが、舌舐めしていた頬は時雨の唇に触れてキスに展開する。

 深くキスを交わすと、いつの間にか目の前にいるのは加奈ではなくて凛の顔が飛び込んで来た。


「良い反応ね。それでこそ私が認めた騎士であり、愛した人よ」


 凛は妖艶な笑みを浮かべて頬を赤らめる。

 彼女も偽者であるのは明白だが、時雨は怒涛の攻めに耐えられず露天風呂に顔を沈めた。

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