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第277話 露天風呂

 時雨は突き飛ばされた傷の手当てのために門倉とミールが休憩室へ付き添ってくれた。

 怪我自体は大した事がなく、念のため身体に異常がないかミールが時雨の頭にそっと手を添えて精密検査を試みたが、特に問題はなかった。


「怖い思いをさせてしまって申し訳ない」


 門倉が頭を下げて謝罪する。

 あの手の客は毎年数件現れる傾向にあるらしく、その度に門倉は対処していたらしい。

 注意喚起を含めて時雨達に伝え忘れていた門倉だったが、まさかアルバイト初日に引っ掛かるとは思っていなかったらしい。

 客商売なので、このようなトラブルは付き纏うものだと教訓になった。


「私は大丈夫です。それより、仕事に戻らないと……」


「いや、今日はこのまま大事を取って部屋で休んでもらうよ」


 仕事に復帰するつもりであったが、門倉はオーナーの立場から身体的に問題なくても、精神的な面を考慮して時雨を休めさせようと判断する。

 確認のために、門倉は警察に暴行罪として被害届を提出するか時雨に問うと、警察の厄介になれば両親の耳にも届いて無用な心配をかけたくないし、逆恨みでもされたら周囲に危害を加えるかもしれないので被害届は出さない意向だ。


「分かった。仕事については明日改めて相談しよう」


 門倉は了承すると、ミールを残して時雨に客室の鍵を渡して海の家へ戻って行った。


(参ったなぁ……)


 時雨は肩を落としてしまうと、ミールが傍に寄って慰めの言葉をかける。


「時雨君には迷惑かけたね」


「いえ……それより、ミールさんはあんな目に遭って大丈夫なんですか?」


「ははっ、私は一応女神だからね。キャスティルと拳を交えた事もあるぐらいだから多少の理不尽な出来事はどうって事ないよ」


 ミールは冗談っぽく笑って答える。

 肝が据わっている言うか年季が違うなと時雨は思う。

 荷物をまとめて用意された客室に移動すると、テラスから海を一望できる絶景である。

 本当は仕事の後に海で遊びたかったが、それは明日におあずけだ。


「ここは露天風呂も完備されているらしいから、これから一緒にどうだい?」


「私はその……後でゆっくり入ります」


 ミールは身支度を整えて時雨を露天風呂へ誘う。

 時雨としては誰もいない時間帯を見計らって一人で露天風呂を堪能するか自室に備わっているシャワーで済ませるつもりであった。


「ふむ、やはり転生後も異性の裸には抵抗ありか」


「えっ!?」


「水着に着替えた時もそうだったけど、気にする必要はないさ。これから鏑木時雨として長い人生を全うしないといけないのだからね」


「分かってはいるのですが、本能的にといいますか……騎士としていけない事だと思うので」


 これに関しては散々凛や加奈に言ってきたが、やはりどうしても抵抗感がある。

 時雨の正体を知る者達は気にする様子は全くないどころか、逆に見たいと好奇心旺盛で理解があるぐらいだ。それでも、時雨の通う高校の同級生は時雨の前世について知る由もなく、騙しているようで後味が悪い。だから、体育の着替え等は率先して早く着替えている。

 時雨は自論を展開すると、ミールは時雨の腕を掴んでそのまま自身の胸に手を添えさせる。


「キャスティルやミュースと違って胸はあまり大きくないけど、触り心地はどうだい?」


「なっ……いけません! こんなお戯れをしては罰が当たりますよ」


「ははっ、創造神の私に天罰を下せる者はいないよ。一緒に露天風呂に入るなら止めてあげてもいいかなぁ」


 時雨は慌てて手を放そうとするが、まるで岩に手を挟まれたみたいにビクともしない。

 柔らかい感触が時雨の手から伝わると、耐え切れずに小さな声で頷いて見せる。

 そんな時雨にミールは意地悪そうな笑みを浮かべて、時雨を弄ぶ。


「おや? よく聞こえないなぁ。時雨君は露天風呂より私の胸を触り続けたいって事かな」


「は……入ります! ですから、解放して下さい」


「ふふっ、じゃあ一緒に入ろうか。約束を破ったら、私が天罰を与えちゃうよ?」


 時雨の回答を聞き届けると、時雨の束縛を解いて見せる。

 創造神と半強制的に約束を交わしてしまったが、本当に天罰が下りそうで恐ろしい。


「さあ、行こう」


 時雨も急いで身支度を整えると、ミールに促されて露天風呂へ赴く。

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