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第274話 こっち側

 昼食も終えて、シェーナの手当てで傷を癒した門倉は時雨達を更衣室に案内する。


「その支給したTシャツを着て接客してもらうけど、後で海を泳ぎたい子は下に水着を着ても構わないよ」


 店名に『女神の館』とカラフルに刺繍されたTシャツを支給されると、女子達の反応はイマイチよろしくない。

 宣伝効果を期待しているのだろうが、正直ダサい。

 雇い主は門倉であるので、ここは我慢して受け入れるしかない。


「断っておくが、更衣室を覗いたりするなよ? 盗撮の類が発覚すれば容赦しねえからな」


「神に誓ってそんな事はしませんよ」


 キャスティルが釘を刺すように警告をする。

 一応、神である門倉が神に誓うのは奇妙な光景である。


「俺は海の家で仕込みをしてますので、どうぞごゆっくり」


 そう言い残して門倉は更衣室の鍵を置いて、さっさと退散する。

 用意された更衣室は予想していたより意外と広い。


「さっさと着替えて行くぞ」


 キャスティルは躊躇いもなく衣服を脱ぎ捨てながら水着の上から支給されたTシャツに着替えていく。

 時雨とシェーナは咄嗟にキャスティルから視線を外すと、その様子にミールは思わず笑ってしまう。


「その初心な反応が可愛らしいね。ここにいる皆は別に時雨君やシェーナ君に裸体を見られても平気だと思うよ。むしろ、見てくれと言わんばかりの子が何人かいるようだけどね」


 ここには時雨とシェーナの境遇を知っている者達で揃っている。

 更衣室に入るのを最後まで躊躇していた時雨とシェーナの背中を早く入れと言わんばかりに女性陣から押し込まれた。

 時雨とシェーナはその場で水着には着替えず、早くこの場を離れたい一心で支給されたTシャツを着込んで早々と立ち去ろうとする。


「そんなに慌てないで、この仕切りカーテンを使うといいよ。せっかく海へ来たのだから、海を満喫しないと損だよ」


 ミールが何もない空間から水色の仕切りカーテンを取り出すと、時雨とシェーナに配慮してくれた。


「面倒な連中だな。遅れずに早く来いよ」


 付き合いきれないとばかりにカーテン越しでキャスティルが更衣室から退出するのを確認できた。アルバイトの仕事が控えているのもあって、ミールが音頭を買って出て気持ちを切り替える。

 更衣室から女子達の声が減っていくと、やがて静寂が支配する。


「私達も着替え始めようか」


「ああ……そうだな」


「うん、早く着替えよう」


 時雨は持参した水着に手を触れると、違和感を覚える。

 シェーナ以外に賛同した者がいたからだ。

 声の主に振り返ると、ロッカーの影に隠れるように香がいたのだ。


「何で香ちゃんがこっち側に?」


「僕も一応、前世は男の子だからねぇ」


 そうだった。

 普段は可愛い物に目がない女子高生の香だが、前世は時雨やシェーナと同じく男である。

 正確には八歳ぐらいの男の子。

 それが今では同級生の幼馴染。

 時雨やシェーナは生真面目な性格と十代後半の思春期で異世界転生したおかげで、転生後の暮らしは色々と苦労の連続であった。

 香の場合、前世で男の子だった期間より笹山香として生活を営んだ時間の方が倍ぐらい長いし、時雨やシェーナより幼い段階で異世界転生したのが要因なのか、女子の生活に違和感なく適応していたように窺えた。


「ほらほら、早く着替えないと女神様に怒られちゃうよ? それとも、僕が着替えさせてあげようかな?」


「じ……自分でできるからいいよ!?」


 香が時雨の衣服に手を掛けて着替えを手伝おうとすると、時雨はそれを恥ずかしそうに振り払ってしまう。

 距離を置いて水着に着替えようとする時雨だが、背後から熱い視線が降り注ぐ。

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