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第27話 バルコニーの景色

 正式な手続きを済ませて、マルとチビに手を振ってペットホテルを後にすると、二人は再び凛のタワーマンションに足を向ける。


「それにしても、大事なくてよかったですね」


 時雨が安心した声で凛に語りかける。


「ええ、特にチビは体が小さいから心配だったわ」


 何か問題があれば、巻絡先に凛のスマホから入る事になっている。

 明日の夕方まで預かる事になっているので、二匹を連れて新しい飼い主に引き渡す予定だ。

 心配した反動なのか、時雨は腹の虫を鳴らしてしまった。


「……すみません」


 顔を赤くして俯く時雨に、凛も同じく腹の虫を鳴らして笑い声をあげた。


「ふふっ、私もお腹が空いちゃった。マンションに着いたら何か出前を取りましょうか」


 信号を渡った先に見えたのは、如何にも家賃が高そうなタワーマンションであった。

 以前、遠目からその姿を拝見しているが、実物を間近にするとセレブが住んでいそうな雰囲気だ。

 時雨は興味本位で凛にタワーマンションについて訊ねた。


「あの、つかぬ事をお聞きしますが、家賃って月々幾らぐらいですか?」

「私の場合は購入しているから、賃貸だと安くても月々三十万円弱からかしら」

「えっ!? 購入しているのですか」


 時雨は賃貸の数字よりも、凛が購入している事に驚いた。

 凛によると、両親が仕事で海外に赴任中は日本に戻る機会は少ないので、購入していたタワーマンションに凛を住まわせたと言う。

 金持ちらしい発想だなと時雨は思うと、やはり前世が一国のお姫様だけあって、お金に困った様子はなさそうだ。


「さあ、立ち話も何ですから入りましょう」


 自動ドアが開くと、凛が先頭に立って、その後を時雨が追う。

 エントランスは高級ホテルの受付みたいで、コンシェルジュの女性が一人常駐している。

 凛の姿を確認すると、コンシェルジュは屈託のない笑顔で出迎えてくれた。


「五十階の桐山ですが、荷物等は届いていませんか?」

「現在、桐山様宛に荷物は届いておりません」

「そうですか。どうもありがとうございます」


 凛はコンシェルジュの女性に礼を言うと、時雨を連れて上層階用のエレベーターに案内する。

 エレベーターは大きく分けて二種類用意されているようで、受付から程近い場所に下層階の住人用に一基、反対側に上層階に暮らす住人用に一基となっている。

 二人はエレベーターに乗り込むと、凛が住んでいる五十階の部屋の前までやって来た。


「さあ、どうぞ」


 鞄から部屋のカードキーを取り出すと、凛は扉を開けて時雨を部屋に招き入れた。


「お邪魔します」


 時雨は靴を揃えて部屋に上がり込むと、生活感のある空間が目に飛び込んできた。

 間取りは三LDKのようで、一人暮らしするには快適な広さと言えるだろう。


「時雨、こっちで良い景色を見せてあげる」


 凛はバルコニーの扉を開けると、地上は陽も暮れて夜景の姿に変わりつつあった。


「わぁ!? 素敵な眺めですね」

「そう言ってもらえると嬉しいわ。でもね……私はこの眺めよりも時雨が喜んだ姿の方が何十倍も価値があるわ」


 凛はスマホで時雨の顔を写真に収めると、それを愛おしそうにして時雨に見せる。


「そんな大げさな……せっかくですから、景色をバックに二人の写真を撮りましょう」


 時雨は恥ずかしそうにすると、凛と並んでスマホの自撮りをする。

 そこに写っていたのは楽しそうな笑顔の女子高生が二人いたのであった。

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