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第265話 甘過ぎる女神

「まあまあ、落ち着いて下さい」


 シェーナが二人の女神をなだめる役に徹する。

 こういう場合、同じ女神でも立場が下っ端のシェーナは気苦労が絶えない。


「ほら、シェーナ君も困っているだろ。お互い気持ちをリフレッシュして仲直りの握手だけでもしようよ」


 ミールが改めて仲直りの左手を差し伸べる。

 拒否したところでこれ以上運転に支障をきたすのは望ましくない。

 ここはキャスティルが大人の対応として折れると、握手をして事態の収拾を図ろうとする。

 ようやくこの騒動も終止符を打ったかと思ったが、握手をしたキャスティルの手に異変が起こった。


「何だこれは!?」


 キャスティルは素早く手を引っ込めると、彼女の手から甘い匂いがする。

 粘着性のありそうな甘い匂いの正体を確認するためにキャスティルが一口舐める。


「ハチミツじゃねえか!」


「ピンポーン、正解だよ」


 陽気な声のミールは自身の左手に付いているハチミツを小さな舌で舐めて見せると、明らかに火に油を注ぐような行為だ。

 ハチミツまみれの拳を握って青筋を立てるキャスティルをシェーナと時雨が二人掛かりでなだめに入る。


「私は甘過ぎる女神だから、辛口な女神のキャスティルにハチミツをプレゼントだ」


「……お前の口にハバネロをぶち込みたくなったよ」


「おいおい、私は辛いのが苦手なんだ。ハバネロよりこんなキャラメルがいいな」


 今度はミールの左手に一口サイズのキャラメルがあった。

 まるで手品を見せられているような不思議な光景に時雨達は思わず見入ってしまう。

 一旦左手をグッと握ると、今度はキャラメルの数が増えてそれを時雨達に振る舞う。


「甘くて美味しいよ」


 見た限りでは普通のキャラメルなのだが、以前食べた飴玉がトラウマになって食べるのを躊躇してしまう、

 香はキャラメルを口に入れて頬張り、「ハチミツの味がするキャラメルだ」と評価は上々だ。

 時雨とシェーナも続いて口にすると、たしかに香の言う通りハチミツの甘味が広がる。

 残ったキャラメルを無理矢理キャスティルの口に放り込むと、ミールは上機嫌になって両手でハンドルを握って仕切り直す。


「次のSA(サービスエリア)で一旦ミュース達と休憩も兼ねて合流だったね」


「合流したら、とりあえず黙って消えて監視の仕事に徹しろ」


「柚子君は本調子じゃないだろうし、このまま運転を続行するよ。それにまたあおり運転に巻き込まれたら色々と大変だろ?」


「その時は私がまた対処するさ」


 不機嫌そうにキャスティルが言うと、あんな無抵抗にやられる女神を目にするのは二度と御免だ。

 多少なりとも反撃して追い返すぐらいの行動に移さなかったのはミールの本来の仕事である監視が絡んでいるのかもしれない。

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