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第259話 神出鬼没

 シェーナに与えられた暗がりの一室で時雨とシェーナは布団に入り、二人は天井を見つめていた。


「シェーナ、まだ起きてるか?」


「一応起きてるよ」


 風呂で刺激的な時間を過ごして眠気はすっかり吹っ飛んでしまったのもあるが、要因はまた別にある。

 創造神ミールの存在である。


「なあ、あのミールって女神様はどんな人物なんだ?」


 時雨は単刀直入でシェーナに訊ねる。

 シェーナが述べた創造神の肩書きとキャスティルを諭せる女神である事実を考えると、やはり只者ではない。


「俺も詳しくは分からない。以前、この世の全てを創造できるとキャスティルさんから話を聞いた事があるぐらいだ」


「それはまたスケールがでかいね」


 最近、女神として登用されたシェーナもその全容は知らないようで謎のベールに包まれている。

 この世の全てを創造できるとは如何にも神話に登場する神様みたいだ。


「そんな凄い女神様なら、今度現れた時に美術の宿題を頼んでみようかな」


 冗談交じりで時雨が笑って答えながら寝返りを打つ。

 画伯の称号を手にした時雨にとって、創造神の肩書きがある女神ならその芸術的センスを存分に活かして協力を仰ぎたいと思う。


 まあ、実際そんな願いをしたところで却下されるだろうが――。


「喜んで引き受けるよ」


 身体を横にずらして寝返りを打った先に、つい先程聞いた事のある声が時雨の耳に届く。

 月明かりが一室を照らすと、黒いフードを被ったミールが時雨の布団に入っていたのだ。


「うわっ!?」


 時雨は思わずその場から飛び起きる。


(いつの間に布団の中に……)


 全然気付かなかった。

 これが魔物や賊の類なら、殺されていただろう。

 心臓に悪い登場の仕方をする女神は時雨の布団から姿を消して、今度はシェーナの布団へ移動する。


「私がその気になれば、宇宙や星も創造できるよ」


 シェーナも布団に入られるまで気配を察知する事ができずに飛び起きてしまう。


「お帰りになられたのでは?」


「君達に帰るとは言ってなかっただろ? その辺を散歩していたら、呼ばれたような気がして現れたまでさ」


 まるでヒーローの常套句みたいだ。

 たしかにミールは先程現れた時に一言も「帰る」と口にしていなかったが、あの流れならもう帰るべき場所へ帰ったのだろうと思い込んでしまった。


(神出鬼没で暇な女神様だな)


 時雨は心の中でミールと言う女神の存在について評価する。


「ふふっ、女神が暇なのはそれだけ世界が平和な証さ」


「いや、そんなつもりでは……」


 時雨の心を見透かすようにミールが瞳を覗き込む。

 この女神に嘘や隠し事はできそうにない。


「それじゃあ、今度は本当に帰るとするよ。楽しい海の旅行になるといいね」


 ミールは無邪気に手を振ってその場から姿を消すと、波乱の夏休みが幕を開けようとしていた。

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