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第249話 祝賀会②

 肉を豪快に頬張るキャスティルに対して、野菜サラダを上品に召し上がるミュースを見ていると同じ女神でもこうも違うのかと思ってしまう。


「遠慮しないで、どんどん食えよ」


「ええ……頂いております」


 キャスティルのテーブルには空の皿が何枚も重なり、テレビ等で見かける大食い選手に勝るとも劣らない。

 時雨は箸を止めてその様子を眺めているだけでお腹一杯になってしまいそうだ。


「本当に遠慮なさらないで、お金の心配とかなさっているのでしたら、全然気にしないで召し上がって下さい。今日の主役はテストで頑張った皆様なんですから」


「金の心配をしていたのか。呆れた連中だな」


 女神達の好意を無駄にする訳にもいかず、時雨達は盛られた肉を口にして行く。

 お金の心配もそうだが、時雨以外の女子達はそれ以上の悩みを抱え込んでいた。


「紅葉はカルビ肉好きだったよね。よかったら、私のあげるわ」


「ああ、ありがとう」


 凛は取り皿のカルビ肉を自然な流れで紅葉に取り分けようとする。

 それをきっかけに加奈も倣って甘い声で時雨に接近する。


「時雨、私の愛が注入された牛タン塩をあ・げ・る」


 牛タン塩に愛を込める女子高生は初めて見る光景だ。

 自身の箸で牛タン塩を食べさせようとする加奈だが、素直に喜べない自分がいるのが悲しい。

 嫌々ながらも口に運ばれると、普通に柔らかい食感が口一杯に広がり美味しい。


「加奈だけずるい! 僕も時雨ちゃんにビビンバとクッパをあげるね」


 香は高温に盛られているビビンバと熱々のクッパを二刀流の要領でスプーンに(すく)う。


「ふーふー。さあ、僕の愛情を召・し・上が・れ」


「あ……ありがとう」


 息を吹きかけて冷ましたビビンバとクッパの両方を口にすると、口の中は火傷しそうに熱い。


「モテル女は辛いねぇ」


 他人事のように加奈がその様子を窺うと、どさくさに紛れて残りの牛タン塩を時雨の取り皿へ移動させる。


(体重か……)


 凛と加奈は明らかに体重を気にしているのは明白だ。

 時雨は太らない体質なので女子達から声を揃えて羨ましいと上がった。

 それを察したミュースは微笑んで頷きながら小さな容器を取り出す。


「さあ、今日ご紹介するアイテムはこちら! 女神が創作した体重を軽くするダイエットサプリメント」


 通販番組のノリで容器の蓋を開けると、そこには錠剤のような物が入っていた。

 女神の創作物となると、加奈に預けている手鏡の仕上がりが説得力となり、女子達の喰い付きはかなり良い。


「今日はここにいる素敵な女性達にプレゼントだ!」


 気前良くミュースが皆に一錠ずつ配布すると、女子達は目の色を変えてサプリメントの効能にあやかる。

 時雨も試しにそれを口にすると、舌の上でラムネの味を感じた。


(これ……ラムネのお菓子だ)


 紅葉も違和感に気付くと、時雨同様に何か言いたい様子だ。

 ミュースは二人に見えるように人差し指を口に当てて、その意図を伝える。


「成長期で若いんだから、体重ぐらいどうとでもなるだろうに」


 そんなボヤキを入れながら、キャスティルは追加の肉を注文していく。

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