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第248話 祝賀会

 休日を挟んでの四日間は時雨にとって息の詰まる日々であった。

 やっとテストから解放された時雨は転生者達と共にミュースの労いでささやかな祝賀会を焼き肉店で開いていた。


「テスト後の一杯は最高ねぇ」


 まるで社会人の大人が上機嫌に酒を飲んでいるような台詞を吐く加奈。

 勿論、加奈が飲んでいるのは酒ではなくてソフトドリンクだ。


「その肉は焼けたぞ。お前、それはまだ生焼けだ!」


 トングで肉を焼いているのはキャスティル。

 肉の管理は全て彼女が担当して、この場を取り仕切っている。

 生焼けだった肉を掴もうとした時雨はそのままキャスティルに勧められた肉を盛られると、大人しく焼き肉奉行様の命に従う。


「時雨さん、お疲れ様でした」


「ありがとうございます。これを乗り切れたのもミュースさんやキャスティルさんが親身になって家庭教師を務めてくれたおかげです。女神様達には本当に感謝しております」


「そんな畏まらなくていいんですよ。困った事がありましたら、いつでも頼って下さいね」


 ミュースはにこやかに労いの言葉を送ると、それだけで癒されてしまう。


(いつでも頼って下さいねか……)


 その響きに時雨は酔い痴れながらソフトドリンクを口にすると、悪い気はしない。

 そんな時雨の心情を察した香は女心に火が付いて嫉妬の炎を膨らませる。


「時雨ちゃん、僕の事もいつでも頼っていいからね!」


 そう言って香が勢いよく時雨の腕へ抱きつくと、飲んでいたソフトドリンクをこぼしてしまう。


「わわっ!? ごめんなさい」


 香はすぐに謝ってお手拭きで時雨が濡らした箇所を拭こうとする。


「そのうち乾くから、これぐらい大丈夫だよ」


「お腹の辺りが濡れちゃっているね。ああ、スカートも大変だ」


 時雨は香に気遣う言葉を掛けるが、香はお構いなしに時雨のスカートに手を伸ばす。


「あ……ありがとう。後は自分でできるから、私に構わず一杯お肉を食べな」


「遠慮しなくていいよ。僕は時雨ちゃんにとって頼りになる存在だからね!」


 誰かにスカートを触られるなんて行為は気恥ずかしくなってしまう。

 そんな時雨の思いを余所にミュースに対抗意識を燃やして一生懸命尽くす香の姿を無下にもできない。


「ふふっ、二人はやっぱり仲が良いわね」


 凛が二人の様子を微笑ましく観察していると、その様子をスマホの写真で収める。

 紅葉も無言で加奈を見つめながら何かを訴えかけている。


「絶対触らせませんからね!」


 人間の姿の加奈は両耳を押えながら、はっきりと拒否する。


「お前等、お喋りする暇があったら肉を食って口を動かせ」


 相変わらずトングで肉の焼き具合を計っているキャスティルは全員の取り皿に肉を盛っていく。

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