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第241話 女子会

 放課後、テスト前で部活動も禁止となり早々と学校を後にする女子生徒達。

 図書室は自習室として開放され、テスト前の時期になると席は全て埋まってしまう。

 香は別室で補習があるので、時雨と加奈は学校の近場にあるファミレスでくつろいでいた。


「あの女神様って、家庭教師の時もあんな感じなの?」


「加奈の想像通りだよ。まさか学校の教師に扮して現れるのは想像できなかったけどね」


 加奈はストローでジュースを啜りながら、突如現れた女神の授業について振り返る。

 威圧的で恐い女神様だが、意外と同級生達の間では好評価だった。

 加奈にも一応キャスティルが教師になった経緯を簡単に説明すると、それを聞いた加奈は思わず苦笑いを浮かべてしまう。


「世の中、知らない方が幸せな事もあるからねぇ。面倒事に巻き込まれたら大変だし、当事者同士で解決しているのなら、深く突っ込まない方がいいかも。凛先輩や紅葉先輩にも聞かれたら、適当に女神の力で教師になったと誤魔化しておこう」


 前世で壮絶なダークエルフの人生を歩んだ加奈が言うと、言葉の重みがまるで違う。

 香には既に魔法を使って教師になったんだよとやんわりした説明で納得してもらった。


「そろそろ、約束の時間だね」


 時計は十六時を回ろうとしている。

 昨日、ミュースが加奈の家庭教師を担当していた際に時雨達を集めて相談したい事があると話を持ち掛けられたらしい。別段断る理由もなく時雨と加奈は指定された約束の時間と場所にやって来た。


「時間ギリギリになってごめんなさい」


 息を切らして慌てて店内に入る二人組の女子高生が時雨達の前に現れる。

 凛と紅葉だ。


「ミュースさんはまだいらしていないので大丈夫ですよ。さあ、どうぞお掛けになって下さい」


「ありがとう。時雨は気が利くわね」


 時雨は凛と紅葉をテーブル席に座らせて、二人に飲み物を提供する。

 凛は感謝の言葉を送ると、アイスコーヒーを口にして喉を潤す。

 紅葉も黙ってアイスコーヒーを口にしながら、加奈をじっと見つめる。


「私はちょっと飲み物のおかわりをして来ようかなぁ」


 加奈は熱い視線を送る紅葉に耐え切れず、コップを持ってドリンクバーのあるところへ逃げ込もうとする。

 紅葉もコップを空にして一気に飲み干すと、そんな加奈の後を追う。


「紅葉は加奈ちゃんが気に入ったようなのよ」


「気に入るような要素はありましたっけ?」


 凛はドリンクバーにいる二人に微笑みを投げ掛けて答える。

 時雨が思いつく限りでは悪戯好き、トラブルメーカー、下世話な話好きな加奈に対して紅葉は正反対な性格だ。

 前世の経歴を見ても道を踏み外したダークエルフ、国の英雄と称された女騎士。

 二人は水と油のような関係だと時雨は思っていた。


「どうやら、紅葉は時雨が保健室で女神様から加奈ちゃんを庇った時に言ったような動物好きらしいのよ。後で確かめたけど、紅葉のスマホにある待ち受け画面は耳が垂れ下がった子犬だったぐらいだからね」


「えっ、それは初耳ですよ」


 前世から長い付き合いだったが、紅葉が動物好きなのは知らなかった。

 言われてみれば、紅葉は加奈の長耳を触れずに残念がる仕草をしていたような気がする。


「頼む。ほんの少しだけでいいんだ」


「絶対嫌です!?」


 粘り強く交渉する紅葉はどうやらダークエルフの長耳をどうしても触りたい様子だ。

 普段は絶対言わないような台詞を二人が喋っている。


「そんな意地悪言わないで、今度触らせてあげなよ」


 二人がテーブル席に戻ると、時雨は加奈にそれとなくお願いをする。


「何度も言ってるけど、長耳は時雨が想像するより敏感なのよ。時雨だって、他人におっぱい触られたら感じちゃうでしょ。それと一緒よ」


「ちょっと、加奈!? 大声でそんな事を……」


 何て例えをするんだと抗議しようとすると、周囲の客や従業員の視線が集中し、凛は可笑しそうに笑ってしまう。

 紅葉も残念そうに俯いてしまうと、誰も時雨にフォローする者はいない。


「すいません、お待たせしました」


 遅れてミュースがいつもの修道服姿で現れると、その背後に私服姿のシェーナもあった。


「何だか楽しそうですねぇ。私達も混ぜて下さいよ」


 呑気な声でミュースがテーブル席に着くと、まるで女子会に参加するような雰囲気だ。

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