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第239話 汚い魔法を発動

 ぼんやり外の景色を眺めていると、暖かい日差しが時雨を夢心地に誘ってしまう。

 教壇には沸点の低い女神様が教鞭を執っている。


(大丈夫かな……)


 家庭教師の面倒を見てくれた時から気付いたのだが、苦手な問題は例題を取り上げて分かり易く解説してくれた。

 それは教師としての立場になっても変わらず、前任者だった先生より上手だ。

 時雨が心配しているのは怒りの沸点は一般人より低い女神様なので、生徒に手を上げたりしないかだ。体罰が浮き彫りとなり、その流れから教員免許や身元が怪しまれたりしないだろうか。最悪の場合、昼や夕方のニュースに教員資格のない女性が逮捕と警察の厄介になるのは勘弁願いたい。


「そのプリントを次の授業までに提出するように! 今日は以上だ」


 宿題のプリントを生徒達に配り終えると同時に授業は終わりを告げる鐘が鳴った。

 時雨は颯爽と教室を退出するキャスティルの後を追う。

 廊下は人目が付くので、出入りが少ない昇降口に移動すると、この状況について説明してもらった。


「まさか学校で先生役を演じて下さるなんてビックリしましたよ。何であんな真似をしたのですか?」


「本当はミュースの店を手伝っていたのだが、心配性のミュースはお前達の様子を傍で監視していろと土下座までして頼み込まれてな。仕方なくここへやって来たまでだ」


 おそらく、時雨達を出汁にして店をクビにしたのだなと察しが付いた。

 キャスティルが創作したあのクレープやたこ焼きを客に提供していたら、いくら赤字を気にしていなくても客足が遠退いて店が潰れてしまうだろう。


「なるほど……でも学校の先生となると教員免許とかどうやって揃えたのですか?」


 時雨は一番気になっている部分を訊ねる。

 ファンタジー独特の神秘の魔法で切り抜けたと女神らしい返答を期待したが、現実は全然違った。


「身分証は知り合いのアメリカ人にパスポートを用意してもらっていたからな。ついでに教員免許も日本の官僚だった人物から裏ルートで用意させた」


 何だか犯罪の臭いがする汚い魔法を発動させたなと時雨は訊ねて後悔してしまう。

 パスポートは以前に時雨達を追い払ってキャスティルと対話を試みた二人のアメリカ人から受け取っていたらしい。教員免許もその伝手を頼りに作らせたようだ。


「そこは華麗に魔法とかで解決できなかったのですか?」


「学校関係者を催眠、洗脳、記憶の書き換えでもすればできるかもしれないが、かなり手間と時間が掛かる。それにその影響で加減を間違えて廃人にしてしまうかもしれんし、そんな違法に手を染めるより合法的に先生を演じた方がいいだろ」


「まあ……はい」


 どちらもグレーゾーンな方法ではあるので、時雨は曖昧な返事をして誤魔化す事しかできなかった。


「お前達に迷惑掛けるような真似はしないから安心しろ。おっと、次は凛と紅葉って転生者の教室で教鞭を執るからそろそろ移動するぞ」


「あっ、待って下さい。飴玉についても……」


 キャスティルは話が終わったと言わんばかりに、足早になって次の授業へ臨んだ。

 今朝、机に置いてあった飴玉の効力やその無効化について詳しく話を伺いたかったが、次の授業が始まりそうな時間に迫っていた。


(うーん……今度会った時に聞こう)


 時雨も急いで次の授業の準備をするために教室へ戻った。

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