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第235話 意外とポンコツ?

 心臓の鼓動が高まると、時雨は身を潜めてカーテンが開かれる。


「どうやら私達の他に先客がいたようね」


 凛がベッドに視線を移すと、小声で紅葉に話し掛ける。

 カーテンが開かれるまで時間もなかったので、とりあえずベッドには加奈が布団に潜って寝ているフリをして、時雨はベッドの下に潜っている状況だ。


「そういえば、最近授業をサボって保健室を休憩所代わりにする生徒がいると風紀委員に報告が上がっていたのを思い出した」


 怪訝そうな顔で紅葉はベッドを見つめると、時雨達にとって話の流れは嫌な方向へ舵を切る。

 風紀委員の紅葉にとって、不良生徒を見逃す筈もなくベッドの中身を確認しようとする。

 当たり前だが、今の加奈はダークエルフの姿。

 不審者として通報されるか、下手をしたら前世が女騎士だった彼女の血が騒いで討って出るかもしれない。


「紅葉、ちょっと待って」


「急にどうしたんだ?」


「私が確かめてみるから、紅葉はそこの一番上の棚にある医療箱から消毒液と絆創膏をお願い」


 凛が間に入って制止する。

 どうやら、凛は膝を擦り剥いて怪我しているらしく応急処置で保健室へ赴いたようだ。

 紅葉はその付き添いでやって来たが、怪我人である凛の頼みなら断る訳にもいかない。


「分かった。ベッドの方は頼んだ」


 紅葉は医療箱のある棚へ足を運ぶ。

 そして凛はベッドに近付くと、尖った二つの物体が飛び出ているのに気付く。


「あら、これは一体何かしら?」


 凛が不思議そうに触ると、ベッドは大きく揺れてイヤらしい声が響き渡る。


「だめ! そこは感じちゃうから触らないで……」


 思いも寄らない返答が返って来ると、これには凛もたまらず驚いてしまう。

 ベッドの下に隠れている時雨はいまいち全容が分からないのでハラハラした様子で耳を傾ける。


(二人は何をしているんだ……)


 時雨の心配も去る事ながら、加奈の声に反応して医療箱を慌てて棚から落とした紅葉は尋常ではない様子で凛に駆け寄る。


「今の声はどうしたんだ!」


「えっと……多分、ベッドの中にいる人の正体が分かったかも」


 凛は布団から頭半分見えている長髪と尖った二つの物体について、おおよその見当がついた。

 紅葉をなだめながら、凛は咳払いをしてベッドの中の人物に問い掛ける。


「そこにいるのは、もしかして加奈ちゃんかな?」


「……正解です」


 加奈は観念して布団から姿を見せると、尖った長耳を両手で隠して小さく乱れた制服姿を恥ずかしそうにしている。


「時雨から加奈ちゃんについて話は聞いていたけど、実物を目にして驚いたわ」


 加奈のダークエルフ姿については以前、それとなく凛に報告していた。

 紅葉は女騎士時代からダークエルフの討伐を請けていた過去があったので余計な情報は入れないでおいたが、もう隠し通すのは無理だろう。


「こ……こいつは!」


 唇を震わせて加奈を凝視する紅葉。

 一触即発の雰囲気に凛は止めに入ろうとするが、次の瞬間――。


「ダークエルフに扮した女子生徒のコスプレか。最近、保健室でサボっている女子生徒は君だったのか」


 凄い勘違いの仕方をする紅葉に対して、凛は思わず笑いがこぼれ落ちる。

 とりあえず三人はカーテンを閉め切ってベッドに腰掛けると、お互いの誤解を晴らして事情の説明を始めた。

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