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第232話 試練

 加奈は誰かと何度かスマホで連絡を取り合うが、応答はない。


「駄目か。仕方ない、予定通りこれで応急処置をするわ」


 諦めるようにしてスマホを鞄に仕舞うと、陳列棚からマスクを取る。

 時雨は不安そうにその様子を眺めていると、買い求めたマスクを時雨に付ける。


「とりあえず、今日一日は季節外れの風邪って設定で押し通すわ。私がサポートしてあげるから、無用な会話は控える事」


 加奈の作戦はこうだ。

 風邪を利用して喉の調子が悪いと周囲に知らせて女子生徒達や教師から極力会話を避ける。それでも空気を読まず時雨に話し掛ける者がいれば、加奈が間に入って用件を窺う。


「本当は解除方法をミュースさんから聞けたらいいけど、電話やメールの反応なし。多分、飴玉みたいな消耗品は手鏡と違って効果は限定的だと思うけど、連絡が入らなければ最悪の場合、今日一日私の作戦プランで乗り切りましょう」


 時雨もキャスティルと連絡先を交換していたので、試しに連絡を入れてみるがこちらも反応はない。シェーナはスマホを含めた連絡ツールを持ち歩いていないので、今は加奈だけが頼りだ。


『加奈、ありがとう』


「困った友人を助けるのは当たり前よ。おっと、そろそろ学校へ向かわないと遅刻しちゃうわ」


 時雨は筆談で感謝の気持ちを伝える。

 時計の針は遅刻ギリギリのところまで迫っていると、加奈は屈託のない笑顔で時雨の手を引いて学校へ急いだ。

 どうにか遅刻は回避して教室へ辿り着くと、二人は息を切らして席へ着く。

 とくに時雨は慣れないマスク越しで走ったので、通常より体力を削られたような感じだ。


「時雨、登校中のアレは何かあったの? てか、そのマスクどうしたのよ」


 同級生達が時雨の席に集まって登校中の恥ずかしい台詞を叫んだ件について事情を窺う。

 席に着くなり、時雨に試練が舞い降りる。


「あれは……ほら、勉強疲れよ。中間テストも近いし普段使わない脳みそをフル回転させて詰め込んだ結果、テンションがハイになったのよ。だから体調も少し悪いみたいで、今日は時雨をそっとしておいてあげて」


 加奈が時雨のフォローに回ると、言い訳としてはかなり無茶があるような気がする。

 同級生達は加奈の話に半信半疑だったが、時雨も大きく頷いて肯定する。


「今日は僕が精一杯時雨ちゃんの面倒を見てあげるから大船に乗ったつもりで安心してね」


 同級生達の間を縫って香が時雨に抱きつくと、時雨の気苦労を気遣って一応納得してくれたみたいだ。

 教室に担任が入って教壇に立つと、各々席へ戻って朝の号令が始まった。

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