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第229話 彼女にプレゼント

 シェーナの熱も引いて無事に時雨の自室へ戻ると、風呂でサッパリした筈なのに疲労が溜まってしまったような気がする。


「お前等、夜更かししないでさっさと寝ろよ」


 キャスティルはそう言い残して隣の柚子の部屋を寝床に移動する。

 二人っきりになった時雨とシェーナは互いに顔を合わせると、部屋の電気を消してそれぞれの布団に潜る。


「すまん、介抱してくれてありがとう」


「別にいいよ。本当はサウナへ連れ去られる前に助けたかったけどね」


「あの時、時雨と立場が逆でも助けられなかっただろうな」


 結果的に助けられなかったのは事実で非難されても仕方がなかったが、シェーナは照れ臭そうに介抱してくれた礼を述べる。


「まあ、風呂の件はもう水に流してさ。前世で男だった者同士、少し相談に乗ってもらってもいいかな?」


「そんな改まらなくても相談なら何でも聞くよ」


「流石は元騎士様。頼りになるね」


 暗闇の中でも、シェーナの声でどんな表情を浮かべているのか安易に想像がついてしまう。

 きっと、調子の良い笑い顔になっているだろう。

 安請け合いして相談に応じてしまったが、同じ境遇で友人の頼みなら断る事もできまい。


「期待に応えられるか分からないけどね。それで相談内容は?」


「二日後に元の異世界へ戻るのは時雨も知っているだろ? 異世界で俺の帰りを待っている彼女にお土産を買って帰りたいんだ」


「女の子にプレゼントか。介抱していた時に呟いたルトルスって子か?」


「ああ……そんな事言ってたのか。彼女のために喜ぶ物を買って帰りたいんだ」


 なるほど、噂の彼女のためにプレゼント選びか。

 女性にプレゼント経験が乏しい時雨にとって難易度の高い相談だ。

 無難に花やアクセサリー等の貴金属をプレゼントすれば喜んでくれそうだが、相手が異世界の女性なら、この世界にしか存在しない物はどうだろうか。


「写真はどうかな? ほら、シェーナのいた異世界には写真が一枚もないって言ってたから、プレゼントしたら喜んでくれると思うよ」


「ああ、それはいいかもしれない。きっとルトルスも喜んでくれると思う」


「でも、こちらの世界の物を異世界へ持ち出すのは女神的な立場でルール違反とかじゃないのかな?」


「一応、検閲はするらしいけど余程の物でなければ大丈夫ってミュースさんが言ってたよ」


 それを聞いて時雨は安堵する。

 早速、明日にでも写真を用意してプレゼントするとシェーナは意気込むと、力になれて良かったと心から思う。


「異世界に戻ったら撮った写真を見せてくれよ」


「ああ、約束するよ。素敵なアドバイスをしてくれてサンキューな」


 シェーナは男勝りな台詞で時雨に感謝すると、しばらくして小さな寝息を立てる。


「どういたしまして」


 小声で返答すると、時雨も目を閉じて眠りについた。

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