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第221話 経験者?

 しばらく集中して課題を終わらせると、休憩時間を設けて一息入れる。


「三十分したら再開する。適当に休んでいいぞ」


 キャスティルはそう言うと、自室の扉を開けて部屋を出る。

 すぐ隣の柚子の部屋から驚いた声が飛び出すと、どうやらキャスティルがお邪魔しているようだ。


(大丈夫かな)


 最初はキャスティルの大きな声が聞こえたが、次第に落ち着いて話し込んでいるようだ。

 シェーナと二人っきりになった時雨はとりあえず客人であるシェーナをソファーに座らせる。


「お茶を用意してきますので、どうぞこちらにおかけになって下さい」


「ああ、私の事はお構いなく」


 時雨は一礼して部屋を出ると、台所から茶菓子を見繕う。

 冷蔵庫には苺大福とショートケーキを発見すると、あの女神様は和菓子と洋菓子どちらが好みだろうか。見た目は欧州の銀髪美女であり、元貴族令嬢の経歴がある彼女なら食べ慣れていそうな洋菓子を選択するところだが、前世が日本の男子高校生だったのを耳にして久々の和菓子を提供するのもありかもしれない。


 悩んだ末の結果、和菓子の苺大福を選択すると、温かい緑茶を淹れて自室へ戻る。


「お待たせしました。どうぞ召し上がって下さい」


 テーブルにお茶菓子を並べると、シェーナは早速苺大福を半分に割って中身を確かめる。


「これは大福だね。中身は……苺大福!」


「あっ、苦手でしたらショートケーキも用意してありますので交換致します」


「いえ、私の大好物です。苺大福は前世で食べたっきりで思わず感動して大声を上げてしまいました」


 前世の世界へ十数年ぶりに帰還したのだから無理もない。

 大好物なら尚更感動も倍増するだろうし、やはり時雨の選択は間違っていなかった。

美味しそうに食べるシェーナを見ていると、一瞬無邪気に苺大福を頬張る男子高校生の幻影が映ったように見えたが、目を擦ってもう一度確認すると銀髪美女の女性が満足気に緑茶を啜っていた。


(まあいいか……)


 客人である女神様が喜んでくれたのなら、それ以上の詮索は野暮だろう。

 空になったお茶請けに急須から新しい緑茶を注ぐと、静寂を保っていた隣の部屋から、再びキャスティルの声が響き渡る。


「こんな馬鹿げた事はありえん!」


「漫画の設定ですし、それにこの手の異世界転生は割とテンプレ化してますよ?」


「異世界転移については全くないと言い切れないが、異世界転生はない。お前等は異例中の異例だ」


 キャスティルは柚子の部屋を飛び出して時雨の自室へ戻ると、片手に漫画の単行本を持っている。どうやら柚子の部屋にあった異世界転生系の漫画を読んだキャスティルが感想を熱く語っていたようだ。


「女神が勝手に前世の記憶を継承して異世界転生させたら、減俸どころかクビになるわ! それと、何で女騎士の殆どが強気キャラで盗賊やオークにやられそうになってんだよ。お前も女騎士として働いていた経歴があるのなら、『くっ! 殺せ』とすぐに降伏はしないだろ?」


「それは……まあ、個人差があると思います」


「何で言葉を濁してんだよ!」


 怒りが収まらないキャスティルは女騎士の経験もあったシェーナに同意を求めたが、どうも目が泳いで歯切れが悪い。


(まさか、経験者なのか)


 シェーナの性格は時雨と似通っている部分があるので、嘘は下手くそだ。

 キャスティルがツッコミを入れてさらに怒りのボルテージが上がると、時雨を巻き込んで休憩時間を過ぎてもお説教がしばらく続いた。

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