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第211話 好きな女の子

 授業は滞りなく再開されると、二人は体育館の隅で体育座りをしながら女子生徒達が跳び箱を飛んでいる姿を見学していた。


「あはは……時雨ちゃん、ごめんね」


「もういいよ。それより、皆が見ている前であんな真似は二度とごめんだよ」


 反省の色は示しているが、根本的な部分は直りそうもないなと時雨は思う。

 時雨が大好きであるがために行動へ移したのは肌で感じ取れたし、悪気がないのは理解しているが、少々語気を強めて怒りを露にしてしまった。


 そんな時雨に香は遠慮がちに右手を伸ばすと、涙ぐんで語り掛ける。


「仲直りの握手。時雨ちゃん、少し機嫌が悪そうだし……僕も本当に悪いと思っているよ」


「……少し苛々してた。良い機会だから、一つ訊ねてもいいかい?」


「うん、いいよ」


 時雨はそっと香の右手を握ると、仲直りの握手は成立する。


「私以外に好きな女の子はいないの?」


「そんなのいないよ」


 香は即答すると、質問の意図を窺うようにじっと時雨を見つめる。

 どうしてそんな事を言うのだろうと不思議でならない様子だ。


「ほら、私は凛先輩や加奈と違って前世は男でがさつな面があると思うんだ」


「そんな時雨ちゃんが私は大好きだよ」


 時雨の肩に寄り掛かりながら、香は時雨の全てを肯定する。

 そこまで言わせてしまう程、果たして魅力があるのだろうか。


「香ちゃんと仲の良い理恵はどうなの? よく一緒にいるじゃない」


 理恵とは香と良く話し相手になっている同級生で友人の一人だ。

 風貌は香と同じくギャルであり、メイクの出来栄えや甘いお菓子の情報交換をしたりしている。一方、時雨はメイクの出来栄えを聞かれてもよく分からないし、甘いお菓子も食べ過ぎは駄目だよと注意してしまうお節介な性格の持ち主だ。


「理恵は僕の大切な友達だよ。最近は時雨ちゃんを振り向かせるために色々とメイクの相談に乗ってもらってたりしてたんだよ」


 メイクの相談は初耳だが、残念な事に時雨は香のメイクに関しては無頓着で変化に気付いてあげられなかった。


(こう言うところが男っぽいなぁ)


 もしかしたら、凛や加奈も時雨の知らないところで変化が生じていたかもしれないし、評価を落としていたかもしれない。

 今後の反省点で見直すとして、時雨はさらに核心を突いて訊ねる。


「その……理恵と特別な関係になりたいとかは?」


「ないない。それに理恵は最近彼氏ができて幸せの絶頂中だよ。あっ、もしかして時雨ちゃんは僕が理恵に乗り換えるかもしれないと心配してたんだね」


「いや、そんなつもりは……」


「安心して!? 僕はこう見えても今は一途な女の子だから乗り換えたりしないからね」


 妙な誤解をされて押し切られると、香は強く時雨を抱き締める。

 授業も終わりを告げる鐘が鳴り、噂をすれば理恵が時雨達に歩み寄る。


「お二人さん。仲が良いのは大変よろしいですが、場所は弁えましょう」


「理恵も時雨ちゃんみたいな事言わないでよぉ。ちゃんと反省してるし、今度は場所を考えて行動に移すよ」


「場所って……頼むから友人が停学や退学処分されるような事態は勘弁してよ」


 理恵と全くの同意見だ。

 やっぱり根本的な部分は直りそうもないなと時雨は呆れながら体育館を後にした。

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