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第205話 良い趣味

「じゃあ、また明日ね」


 加奈はミュースのキッチンカーに乗って帰宅して行くと、キャスティルと二人っきりになった時雨も街灯が照らされた並木道を引き返して行く。


「近くのコンビニへ寄ってもいいか?」


「ええ、構いませんよ」


 帰り道の道中、コンビニはあるのでキャスティルの希望に沿って立ち寄る事にする。


 並木道を通り抜けて駅前のコンビニに入ると、キャスティルはすぐさまカウンターの列に並び始める。

 時雨は適当に飲料水やお菓子を選んでキャスティルの後に続く。

 公共料金の支払いでもするのかなと時雨は思っていると、レジが空いてキャスティルの番手が回って来た。


「いらっしゃいませ」


「キャメル・メンソール・ライト・ボックス一つ」


 キャスティルが当たり前のように注文すると、呪文のような言葉の羅列に時雨は首を傾げてしまう。それは対応している店員も同様で、隣で接客していた年配の店員が助け舟を出して店員に指示する。番号が振られている煙草の棚から、指示された番号の煙草を手に取って会計は無事に済んだ。


 時雨も自分の買い物を済ませると、彼女の隣に並ぶ。


「煙草、お好きなんですね」


「まあな。煙草と女は私の生活に必需品だからな」


「煙草と女ですか……」


 まるでハードボイルドな男性が言いそうな台詞だ。

 一応、キャスティルは女神で女好きとなると、時雨の中でこの人は百合に当て嵌まるのかと感慨深くなってしまう。

 そして、時雨の中で一つの妄想が頭を過ぎる。


(まさか……ミュースさんとそんな関係なのか)


 ミュースは酒を飲ませなければ、清楚と呼ぶに相応しい美しい女神である。

 キャスティルも目付きが鋭く粗暴な女神であるが、どちらかと言うと男性より女性にモテそうなタイプだ。元々は上司と部下、時雨達の前では馬が合わない感じを装って、二人だけの時間になれば違う世界観になっているのかもしれない。


「良い趣味をお待ちですね」


「ほう、意外だな。お前のような真面目な人間は否定すると思ったんだがな」


「煙草は吸った事ないので分かりませんが、私は前世が男だったので女性が好きと言うキャスティルさんの気持ちは理解できます」


「なるほど、転生後も恋愛対象は女のままか。じゃあ、昨日と一昨日に姿を見せた女達はお前のコレか?」


「ち……違います!? 今は先輩と幼馴染の関係です」


「うぶな奴だな。そんな必死に否定する姿を見ると、前世は童貞だろ? お前のような奴は複数の女と関係を持っても罰は当たらねえよ。ハーレム結構、若いんだからその勢いで処女は卒業しろよ」


 妙な勘違いをされて時雨はキャスティルに背中をバンバン叩かれて激励される。


「まあ……精進します」


 愛想笑いを浮かべて曖昧な返事をすると、少しだけキャスティルと距離感が縮んだような気がした。

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