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第2話 桐山凛の正体

 放課後、帰宅部の時雨は早々と帰る仕度をすると、香が背伸びをしながら一緒に帰ろうと時雨を誘う。


「お疲れ。カラオケでストレス発散して帰ろうぜ」

「ごめん、今日は剣道部の桐山先輩に呼ばれているんだ」

「桐山先輩? へぇ……時雨はあんなお嬢様がタイプなのか。いつの間にお近づきになったのかねぇ」

「そんなんじゃないよ。もう……」

「ははっ、冗談だよ。そういう事なら仕方ない。今日のところは退散しますか」


 香は茶化して諦めると、時雨に手を振って他のグループの友達と合流してその場から去って行った。

 時雨は早足で廊下を歩いて行くと、校門前に待っているであろう凛の元へと急いだ。

 文武両道、容姿端麗な凛に対して、時雨は平凡な女子高生である。

 自身の能力を冷静に分析しても、凛が興味を示すような事はない筈だが――。

 もしかしたら、からかわれているのではないかと勘繰ったが、自己紹介をした後に意味深な言葉を放った凛に時雨は漠然とした気持ちでいっぱいだった。

 下駄箱で靴を履き替えて校庭を突き抜けると、校門前に凛が立っていた。

 時雨の姿を確認すると、凛は顔を膨らませてみせた。


「こら。レディーを待たせるなんて、騎士(ナイト)として失格よ」

「すみません……」


 反射的に時雨は謝ると、凛は笑って時雨の背中を軽く叩いた。

 先程の授業もそうだったが、時雨はこの世界に転生してから謝り癖が身に付いてしまっているなと痛感している。


「君は本当に相変わらずだわ……近くのファミレスに寄ってもいいかしら?」

「ええ……私は構いません」

「じゃあ、行くわよ」


 凛は率先して時雨の腕を抱くと、周囲の目を気にせずに歩き出した。

 今日初めて出会ったばかりなのにと、凛の温もりに触れて時雨は顔を赤くしてしまった。


「桐山先輩、その……恥ずかしくないですか?」

「そんな事ないわ。こんなのは挨拶代わりみたいなものよ」


 まるで男のような堂々とした態度で時雨をエスコートしていくと、微笑んで答えてくれた。

 時雨より高身長であり、がっしりした体つきも相まって男性に付き添われているような錯覚に陥りそうだ。


(これは女子達の黄色い歓声も納得してしまうな)


 近くのファミレスに入ると、二人はテーブル席に着いてお互い面と向かって座った。


「ここは私が奢るわ。好きな物を注文してとうぞ」

「いえ、先輩に悪いので割り勘で……」

「そんなの気にしなくていいわ。私が呼びつけたのだからね。さあ、選んで」

「そういう事でしたら、ありがとうございます」


 凛からメニュー表を手渡されると、時雨は遠慮しながらポテトフライを選んだ。


「私はポテトフライでお願いします」

「それだけでいいの? 私は唐揚げ、シーザーサラダ、マルゲリータピザ、苺パフェを頼むけど遠慮しなくていいのよ」

「夕飯もあるので、これで大丈夫です」


 聞いただけでお腹いっぱいになりそうだなと時雨は思いながら、凛は店員を呼んで注文を済ませた。


「さて、では本題に入りますか」


 凛は本題と称して時雨の瞳をじっと見つめると、時雨は生唾を飲んで緊張に駆られた。


「そんなに緊張しなくてもいいわよ。元コルカルト王国の王族騎士ロイド・ハーティン殿」

「!?」


 凛は時雨が前世で暮らしていたコルカルト王国とロイド・ハーティンとして王族騎士に配属されていた事を言い当てた。

 夢でも見ているのではないかと思ったが、凛は続けて言葉にする。


「さっき廊下でプリントをばら撒いて、あなたの手を触れて全て理解したの。どういう仕組みかは分からないけど、前世の記憶が蘇って懐かしい名を呟いたわ」

「桐山先輩……いえ、あなたは何者なのですか?」

「薄々気付いているんじゃないかしら? 廊下であなたは私の前世の名前を呟いたのよ」

「まさか……シェラート様なのですか!」


 時雨は大声を出して席から立ち上がると、周囲にいた客達は驚いた様子で時雨達を見つめていた。


「馬鹿!? 急に大声を張り上げるんじゃないわよ」


 凛は小声で注意を促すと、我に返った時雨は恥ずかしさのあまり、すぐさま縮み込んで席に着いた。

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