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第176話 愛情

 時雨と凛は昼食を作るために駅前のスーパーに足を運ぶ。

 凛の希望で時雨の手料理が食べたいと言う願いを叶えるために、まずは食材を掻き集めるところから始める。


「凛先輩はどんな物が食べたいですか?」


「そうね。時雨の愛情がこもった料理なら何でもいいわ」


「愛情……ですか」


「そう、愛情よ。それとも、私に愛情は注げないから冷凍食品とかで済ましちゃう?」


「そんな事しません!? ちゃんと凛先輩が喜ぶ料理を作って差し上げます」


 手料理と言っても、和食、洋食、中華と料理のジャンルは様々だ。

 参考程度にどんな物が食べたいか聞いたのだが、かえって悩んでしまう結果になってしまった。


(愛情か……)


 時雨の脳裏には凛とキスした時の事が鮮明に蘇る。

 エルフの特性が働いて優等生である凛の激しく愛情に飢えている姿を垣間見た時は驚きと同時に複雑な心境に陥った。かつては主従関係から身分の差、現在は先輩後輩の間柄であり同性同士、それ以上の関係に踏み込んではいけないと心に制御(ブレーキ)をかけていた。


 凛の幸せを影から見守れれば、それで満足だった筈だ。

 そう、影に徹するだけでいいんだ――。

 自問するように時雨が深く考え込んでいると、凛は背後に回って膝カックンをお見舞いする。


「よいしょ」


「うわっ!?」


 時雨はよろけて体勢を崩すと、突然の出来事に思わず驚きの声を上げてしまう。

 凛を慕っている女子生徒達からすれば、膝カックンする凛の姿はとても想像できないだろう。

 凛は野菜売り場に置いてあるニンジンをマイク代わりにして時雨にインタビューする。


「時雨選手、膝カックンされた感想を一言どうぞ」


「ビックリしましたよ。まさかそんな悪戯を仕掛けて来るなんて予想もしていませんでした」


「時雨があまりにも無防備だったから、悪戯心に火が付いちゃったのよ。それとも、背後から胸を揉んでみた方がよかったかしら?」


 それは勘弁して欲しいなと時雨は思う。

 ここ最近は加奈の悪戯に付き合わされていたので、凛と一緒にいる時は穏やかな時間を過ごしたいものだ。

 時雨は顔を赤く染めて凛に抗議する。


「それは……セクハラです。いや、パワハラですよ」


「あらあら、そんな事言われると困っちゃうわ」


 大げさに困ったふりをする凛だが、その様子からどこか楽しげである。

 こうしていると、まるで前世に戻ったような懐かしい感覚が蘇る。


(元気になられてよかった)


 つい最近まで、どこか寂しい背中を目にしていたので心配になっていた。

 昼食は凛のために一生懸命愛情を込めて作ろうと改めて気合いが入る。


「少しは反省なさって下さい。じゃないと、私の愛情が入った料理は作れませんからね」


「私を飢え死にさせるつもりなのかしら。もう、時雨の意地悪さん」


 二人はそんな会話をしている内に自然と笑みがこぼれる。

 買い物カゴに食材を詰めていくと、買い物を済ませて帰路に就いて昼食の準備に取り掛かる。

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