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第170話 ドーモ、凛サン

 玄関先から時雨の代わりに凛を持て成している優奈の声が聞こえる。


 二人の足音が自室に近付いて来ると、時雨は慌てながらクローゼットにあるニット帽を被って長耳を隠す。


 自室の扉が開くと、赤いワンピース姿の凛が目に入った。


「あら、来客中だったのね。それなら、私は席を外して……」


「ドーモ、凛サン。ワタシ、時雨サンノ友人ユナデス」


 時雨は咄嗟に思い付いた自己紹介をすると、凛は固まってしまった。

 優奈もぽかんとした表情でこちらを見ると、数秒経過して時雨は後悔する。


(やばい……加奈と同じ道を辿っている)


 沈黙がしばらく続くと、優奈がフォローして凛を席に座らせる。


「じゃあ、早速先輩に勉強を教えてもらいましょう。ユナはそこでじっとしててね」


「ハイ……」


 時雨は声を潜めて部屋の隅にじっとして座る。

 ここはしばらく優奈に任せて、じっと耐え忍んで待って元に戻る機会を待つのが得策だ。


「そんな意地悪しないで、ユナさんも私達と一緒にこちらへどうぞ」


 凛は手を差し伸べると、彼女の優しい温もりに時雨は嬉しく思う。


 遠慮がちに三人は輪になって集まると、優奈は小皿に盛っているお菓子を凛に勧める。


「先輩、よろしければお菓子をどうぞ」


「あら、ありがとう」


 凛がお菓子を摘むと、時雨はその様子をじっと見つめる。

 優奈もそれに続くと、時雨に視線を送って何かを訴えかける。


(なるほど、話題を振れって事だね)


 時雨は小さく頷くと、軽く咳払いをして凛に話しかける。


「凛サン。今日ハ良イ天気デスネ」


「えっ? ええ、そうですね。ポカポカした陽気で気持ちいいですね」


 困惑した表情を浮かべて、凛は苦笑いをする。


 優奈は小声で「何をやっているんですか!」と突っ込むが、時雨の暴走は止まらない。


「凛サンハ太陽ノヨウニ眩シクテ美シイ。ソウ、マルデ太陽ノ女神ミタイデス」


「まあ……初対面の女性にそんな事を言われるなんて嬉しいわ。ユナさんも白い肌がとても綺麗で羨ましいです」


 凛は突然褒めちぎられると、顔を赤く染めて悪い気がしないでもない様子で照れてしまう。


 本当は時雨もお菓子を食べて大人しくしていて下さいと言う意味で視線を送った優奈だったが、とりあえず上手く誤魔化せたので結果オーライだ。


「先輩、ちょっとお手洗いに行ってきます。ユナも一緒にね」


「あらあら、二人は仲が良いのね」


 優奈は席を外す口述を作ると、時雨も連れ出して廊下へ出る。

 凛に声が届かない洗面所まで移動すると、優奈は呆れた声で時雨にダメ出しをする。


「時雨さん、勘弁して下さい。片言の日本語で喋る外国人は明らかに不審者丸出しですよ」


「うう、ごめんなさい」


 片言で喋る外国人の設定は加奈の影響を受けた系譜によるものだが、おそらく信じてくれないだろう。

 時雨は一連の流れについて反省の色を見せると、優奈はさらに続ける。


「それに私の姿で女性を口説き落とすような台詞は止めて下さい。変に誤解されたらどうするんですか。私が口説くのは加奈お姉ちゃんだけと決めているんですからね」


 最後の部分はどうなんだろうなと時雨は思うと、とりあえず普通に喋る事で方向性を変えて、優奈が話を振らない限りは口を閉じている事で意見がまとまった。

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