第17話 昼食の選択
結局、香はパレオ付き水着を選んで落ち着いた。
「そろそろ、昼食にしようか」
時計は正午を過ぎて、色々な店を見て回って小腹も空いてきた。
そんな時雨に香はフードコートがある施設を指差す。
「あそこで食べよ。和食、洋食、中華のどれにしようか?」
「うーん……迷うね」
時雨は腕を組むと、どれも捨てがたい。
転生してから、前世にはなかった和食や中華を目にして口にした時は衝撃的だった。洋食の一部は慣れ浸しんだ食べ物があったので、見た目の衝撃は薄かったが、味付けは格別。
食材や香辛料を手軽に入手できたり、料理レシピをスマホ等で検索して誰でも美味しい料理を共有して作る事ができる環境が整っているのは素晴らしい事だと時雨は思う。
参考までに、香は何が食べたいか訊ねてみる。
「香はどれが食べたい?」
「私は……時雨を食べちゃいたいな」
「もう、真面目に答えてよ」
大げさに襲い掛かるような仕草をする香に、時雨は呆れてしまう。
「ははっ、冗談だよ。私の胃袋は中華を求めているってところかな」
「じゃあ、中華にしようか」
あまり冗談に聞こえないが、香は中華を希望する。
時雨は香に合わせて、昼食は中華に決定。
フードコートの施設に入ると、なかなかの盛況っぷりで食べ物の良い匂いで充満していた。
二人は中華のある店に足を運んで食券機の列に並ぶ。
お勧めはランチメニューのラーメンセットと広告が貼り出されているので、時雨はそれにする。
「時雨の注文する品を当ててあげようか?」
唐突に香は自信満々に言うと、怪訝そうな顔で時雨は答える。
「別にいいけど、本当に分かるの?」
「時雨と幼馴染を十年以上やっているからね」
そんなものなのかと時雨は一応納得すると、香の解答を待つ。
「ずばり!? レバニラ炒め定食ね」
「……ハズレだよ」
ドヤ顔の香だが、時雨は間違いだと指摘する。
どういう過程でレバニラ炒め定食に至ったのか聞きたかったが、香はもう一度気を取り直して答える。
「ふふっ……なかなかやるわるね。それなら、餃子定食で間違いないわ」
食券機は時雨達の番手に回って、時雨は食券を買って香に答えを提示すると、ついでに香が注文する品を言い当てる。
「香が食べたいのは野菜たっぷりなタンメンでしょう? 大方、カロリーが多くなくて野菜がいっぱい取れるからって理由だと思うけどね」
「ぐっ……時雨はエスパーか」
香は正解を当てられただけでなく、理由まで的確だったために、ぐうの音も出ない様子だ。
香も言い当てられたタンメンの食券を買うと、しばらくして二人はそれぞれの注文の品をトレーに乗せて空いているテーブルの席に着いた。