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第161話 本来の目的

「さて、じゃあ私達もそろそろ帰りますか」


 小腹も満たしてファミレスを出ると、加奈は満足そうな顔で駅に向かおうとする。


「こら、勝手に帰ろうとするんじゃないよ」


 時雨が加奈の腕を引っ張って呼び止めると、芝居がかった気弱な女子を演出する。


「時雨がそんな大胆な女だったなんて知らなかった……今夜は優しくしてね」


 すると、香は機敏に反応して時雨に問い掛ける。


「えっ……時雨ちゃんは加奈と特別な一夜を共にするの?」

「二人共、何馬鹿な事言ってるの。加奈は私の家に何をしに来たんだっけ?」


 加奈はわざとらしく腕を組んで考える素振りをすると、時雨の腕を優しく抱いて妖艶な声で答える。


「ウフフ、時雨と特別な時間を過ごすためじゃない」


 このダークエルフはまた誤解を招くような事を言ってからかうと、香も負けじと時雨の腕を抱いてみせる。


「加奈はどうせ無理に時雨ちゃんを惑わして、あらぬ既成事実を作ろうとしているだけでしょ。特別な時間なら、僕が時雨ちゃんと過ごすよ」

「お子ちゃまはお呼びじゃないのよ。帰って学校の宿題でもしていなさい」

「お子ちゃまじゃないもん!?」


 二人は時雨の腕を引っ張り合うと、どちらも主張を譲る気はないようだ。


「いてて、二人共! いい加減にしなさい」


 傍から見れば、女子二人から取り合いになって羨ましい状況なのだが、どちらも動機は不純なので素直に喜べない。

 時雨は隙を突いて二人から逃れると、まず加奈の長耳をモフって黙らせて、香の腕を掴んで動きを封じる。


「宿題やるのは加奈の方でしょ! お望み通り、宿題が終わるまで私が監視して特別な時間を過ごさせてあげるから覚悟するように。香ちゃんはちゃんと宿題終わっているの?」

「僕は……終わっているよ」


 香は時雨と視線を逸らして、手をもじもじさせてしまう。


(これはこの子も終わってないな)


 香とは幼馴染で前世から兄弟の関係だと判明してから、大体の思考は読めている。

 困った時には必ず今のような所作をするので、嘘を付いているのは一目瞭然だ。


「二人共、今からお望み通り私の家で特別な時間を過ごしてもらいます。特に加奈は泣き言やエロい事で誘惑したら、問答無用で長耳をモフるから覚悟するように」


 時雨は心を鬼にすると、香はしゅんとなって観念したように小さな声で「はーい」と答える。


「時雨さん、それは騎士として恥ずべき行為よ。ダークエルフの長耳をモフるのは人間で例えると、おっぱいを鷲掴みするのと同等なのよ! 時雨には騎士としての誇りはないの?」

「騎士には本人のために覚悟を決める時もある。それは今だと思うよ」


 それっぽい台詞を吐いたが、これ以上加奈の三文芝居に付き合う気はない。

 時雨は二人を自宅まで連行すると、加奈は「時雨の変態、鬼畜、外道」と散々な罵声を浴びせて、夕刻過ぎになってやっと解放された。

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