第147話 僕もモフる
両親は交通の渋滞に巻き込まれて深夜の帰宅になって、まだ部屋で眠っている。
時雨はとりあえず、両親や加奈達のために簡単におにぎりを用意すると、両親と柚子の分は食卓のテーブルによけておいて、加奈達の分を自室まで運んだ。
「朝食の用意できたよ」
自室に戻ると、香と加奈は手鏡を覗き込んで元に戻る手掛かりを探っていた。
「よっ、待ってました」
加奈が一目散に飛び付いて、片手におにぎりを持つと早速味見をする。
「こらこら、行儀が悪いよ」
時雨は注意すると、加奈はあっと言う間に片手にあったおにぎりを平らげてしまった。
「この姿だと、カロリー消費が激しくてお腹空くのも早いのよ。それより、時雨の作ったおにぎり美味しいよ。時雨はきっと将来、良い母親になれるよ」
「それはどうも」
褒めてくれるのは有り難いが、自身が結婚して母親になる姿は到底想像できないので現実味がない。
「もしもの時は僕が時雨ちゃんの旦那になってあげるから安心していいよ」
「じゃあ私は子供役で厄介になろうかしら」
香は無邪気な笑顔で父親役に買って出ると、加奈も子供役に乗じて話が盛り上がる。
「加奈はヒモ生活を満喫したいだけでしょ」
「そ……そんな事ないわよ。それに、こんな幼気な美女を世間は放っておかないよ」
香に突っ込まれると、加奈の自信はどこから湧いて来るのだろうと不思議に思う。
「少なくとも、私は追い出すよ」
時雨は呆れてしまうと、おにぎりを摘んで答えた。
加奈は負けじと食い下がって、時雨の肩に寄せ合う。
「お金の代わりに身体で払うよ。それなら時雨も納得でしょ?」
「……」
「おやおや、何も言えず想像しちゃうところは、やっぱり男ねぇ」
好き勝手言われて、時雨は終始無言を貫いていると、加奈を手招きして誘い込む。
「あら、早速実践するのかしら。香も見ている中で大胆だけど、意外と嫌いじゃないわよ」
加奈が無防備に顔を近付けると、時雨は間髪入れずに長耳をモフる。
長耳を上下に動かしながら、全身に快楽が行き渡ると、加奈は懇願して悔い改める。
「そこは駄目なの! 気持ち良すぎて頭が真っ白になって何も考える事ができなくなっちゃうよぉ」
しばらくモフっていると、加奈は頭を引っ込めて綺麗にバク転を決める。
息を切らして涙目で長耳を押える加奈に対して、その様子を一部始終見ていた香は思わず拍手する。
「凄い身のこなしだね。僕もモフっていい?」
「だ……駄目!」
「加奈は僕の胸とか触っているのに、不公平だよ。大丈夫、少しだけだから」
今度は香の魔の手が差し迫ると、拒否も虚しくモフられるのであった。