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第143話 ゴールデンウィーク 最終日

 柚子も風呂から上がり、目覚めた加奈の姿を見ると安堵して謝罪する。


「加奈ちゃん、ごめんね。まさか、あんなエロい声を出して気絶しちゃうとは思わなかったのよ」

「もう、耳は触らないで下さい」

「ええ、お詫びに今夜は時雨を好きにしていいよ」


 耳を押えながら警戒する加奈に対して、柚子は時雨を差し出す。


「えっ? 何で私が……お姉ちゃんが責任取ってよ」


 生け贄にされた時雨は呆然となって、柚子に抗議する。

 それに、加奈次第でお詫びの内容が眠れぬ夜を過ごす事になってしまうかもしれない。


「お姉さん、あざっす!」

「いや、あざっすじゃないよ……」


 加奈の元気の良い掛け声に突っ込む時雨は頭を抱えてしまう。


「じゃあ、後は若い二人に任せて退散しますわ」

「あっ、ちょっと話はまだ終わってないよ」


 柚子は時雨の制止を振り切って足早に部屋を出ると、加奈は気楽に手を振って見送る。


「時雨、一緒のベッドで寝よう」

「嫌だよ。別々の布団で寝るよ」


 ベッドに誘い込む加奈に対して、時雨はきっぱりと拒否する。


「それより、加奈もお風呂に入ってさっぱりするといいよ」

「なるほど、下準備って訳ね。時雨は順序を守るタイプか」

「……私はもう先に寝ているからね」


 時雨は電気を消すと、付き合いきれないとばかりに布団へ潜る。


「まあいいわ。私もこの姿でお風呂に入るのは久々だから、ゆっくり湯に浸かるよ。時雨もよかったら一緒に入る?」


 加奈の問いに時雨は何も答えず、しばらく沈黙が続くと「うぶな騎士様ね」と加奈は呟いて脱衣場へ向かった。


 次の日、最終日のゴールデンウィーク。

 天気は生憎の雨で雨音も激しい様子だ。

 時雨は目を覚ますと、身体の上に何か重く圧し掛かっているのに気付いた。


(何だろう?)


 完全に覚醒してなかったので、時雨はゆっくり目を開けて確認するとダークエルフ姿の加奈が覆い被さっていた。


「か……加奈! 何やってるの」

「んん……時雨は最高に美味しいわ」


 時雨は素早く布団から身体を起こすと、加奈はまだ夢見心地だ。

 意図してなのか、それとも寝ぼけて時雨の布団に迷い込んだのか分からないが、一番驚いたのは元の姿に戻っていない事だ。

 加奈の話では魔法の効力が切れて元に戻ると言っていたが、このまま元に戻らなかったらダークエルフ姿で私生活を過ごす事になり、学校も通わなくてはいけない。


(コスプレ感が半端ないな……)


 時雨はダークエルフ姿の加奈が学校の制服に着替えて登校するのを想像すると、間違いなく浮いた存在だ。


「加奈、起きてよ」


 加奈の身体を揺さ振って起こそうとすると、雨音と共に雷鳴が轟く。

 それと同時に時雨の部屋の扉が開く。


「時雨ちゃん、雷怖いよぅ」


 寝巻姿の香が勢いよく部屋に入ると、時雨と見知らぬ女性が目に飛び込む。


「あっ……これは違うんだよ!」


 時雨は置かれた状況について、絶対勘違いされると確信があった。

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