第132話 お土産
展望台からの眺めを十分に堪能すると、階下のお土産売り場で買い物を楽しんでいた。
こう言うお土産売り場のラインナップは大体ご当地の菓子や名所に因んだ物を販売と相場は決まっている。
転生した時雨にとって、それはとても新鮮で旅行へ足を運ぶ時はその土地のお土産に心躍らせたものだ。
香がお土産を物色していると、饅頭の詰め合わせを嬉しそうに選んだ。
「やっぱり甘い物は外せないよね」
「香ちゃんは甘いお菓子が好きだね」
「えへへ、でも私が一番好きなのは目の前にいる時雨ちゃんだよ」
嬉しい告白なのだが、偶々傍を通りがかった男性店員は香の言葉に思わず振り向いて反応すると、客に呼び止められて我に返り接客の対応に追われる。
時雨もお土産を物色していくと、無造作に置かれている木刀に目を奪われる。
(これは……)
何の変哲もない木刀を手にすると、騎士としての血が騒ぐ。
中学生の修学旅行でも旅行先のお土産屋で木刀があるのを見つけると、思わず見惚れてしまったぐらいだ。
当時、そんな時雨に加奈は「まるで男の子みたいね」と茶化されたが、そんな言葉を気にせず衝動買いしてしまった過去がある。
あの時の木刀は結局部屋の片隅で放置されて、不思議と手元に届く範囲にあると熱意も冷めて、どうして衝動買いしてしまったのだろうと後悔してしまった。
冷静になって考えると、また同じ轍を踏むのが目に見えているので木刀を元の位置に戻すと、代わりに可愛らしいカチューシャを手に取った。
「これなんか、香ちゃんに似合うと思うよ。私はこれにしようかな」
時雨は香のために赤のカチューシャ、時雨は青のカチューシャをそれぞれ選ぶと香は喜んでくれた。
「わぁ、僕のためにありがとう!?」
思わず一人称が『私』から『僕』と素の状態でなってしまったが、それだけ嬉しかったのだろう。
二人はレジに並ぶと、先程の男性店員がレジ対応に当たる。
お釣りと土産物袋を手渡すと手を繋いで去って行く二人を目で見送っていると、店長が腕を組んで遮るように立って勤務中にぼっーとするなと注意を促されるのが聞こえてきた。