第119話 占い(現代)②
加奈は首を横に振ってみせると、どうやら身に覚えがある様子だ。
「ふふっ、満足できる答えでしたか?」
自信あり気に今度は占い師が加奈に語りかける。
只者ではないなと時雨は警戒心を強めると、次に時雨が占いの要求をする。
「あの、私も占ってもらってもいいですか?」
「ええ、どうぞ。明日の天気から恋の行方まで何でも占って差し上げますよ」
占い師は再び口元を緩めると、占いに対して絶対の自信があるようだ。
明日の天気と口にしたのは些細な未来でも占うし、複雑な人間関係である恋の行方も完璧に占うと言う意思表示が見え隠れする。
慎重に何を占うか悩んでいると、一つだけ答えられないであろう内容が頭に浮かんだ。
時雨がそれを口にしようとすると、占い師は待ったと言わんばかりに言葉を遮って制した。
「お嬢さんが私にどのような占いをご所望なのか占って言い当てましょう。そしてご所望の答えも一緒に導き出します」
「えっ?」
時雨は思わず驚いて裏返った声が出てしまった。
(いくら何でもそんな事は不可能だ)
時雨は心の中でそう呟くと、占い師が放った次の台詞に度肝を抜かれた。
「あなたは今、『いくら何でもそんな事は不可能だ』って思いましたね?」
警戒心を強めていた時雨は目を見開いて虚を突かれた感じだ。
まるで心の中を丸裸にされたような気分で、この占い師の前で隠し事ができないのではと思ってしまう程だ。
「では占う前に、こちらの紙に占う内容を書き記して隣のお嬢さんに見せて上げて下さい。内容を確認しましたら、こちらの灰皿に紙を置いてこのマッチで燃やして下さい」
「ええ、分かりました」
時雨は言われるがままに一枚の紙を手渡されると、ペンで占いの内容を書き記していく。
占い師はその間準備が整うまで、時雨達に背を向ける。
緊張しながら一字一句丁寧に書き終えると、時雨は紙を加奈に手渡して内容を確認させる。
「これは……」
加奈は生唾を飲むと、軽く頷いて了承する。
どんな高名な占い師でも、この内容は答えられないだろうと自信があった。
時雨は灰皿に紙を置くと、マッチを付けて燃えしてみせた。
黒焦げになって灰となった紙を確認すると、占い師は再び正面を向いて時雨達と対面する。
「ふふっ、それでは占いを始めましょうか」
その言葉に時雨は再び緊張感が高まると、結果次第では占い師を問い詰めないといけない。
占い師の挙動から目を離さずに、先程の加奈と同じ過程で占いを進めると、滞りなく結果が出たようだ。




