第118話 占い(現代)
第117話で占いの導入部分がありましたが、第118話に持ち越して一部改稿を試みました。
読者の皆様方に混乱を招くような真似をして申し訳ありません<(_ _)>
本筋のストーリーに大まかな変更点はございませんので、何卒よろしくお願いします。
一通り見て回って楽しむと、フロアの奥隅でひっそり垂れ幕と旗が飾られているのを見つけた。
どちらも『占い』と表記されており、ここが占い屋であるのは明白だった。
「エステサロンとかよく見かけるけど、占い屋は珍しいね。経営者で占い好きの人が営業しているのかも」
占い好きかはともかくとして、たしかに銭湯で占い屋の組み合わせは珍しいなと時雨も同意する。店の経営方針なら思い切った取り組みであるが、昨今は女性層を狙ったエステサロンのようなサービスもあるのだから、占い好きの女性層を狙っているのかもしれない。
「私達も占ってもらおうよ」
案の定、加奈も占いに興味を示して時雨を誘う。
凛もそうだが、女性で占い好きは一種のステータスなのかと勘繰ってしまう。
「私はいいよ。ここで待っているから、加奈一人で占ってもらいなよ」
時雨はあまり興味がないので遠慮すると、加奈はお構いなしに時雨の手を引いて、垂れ幕の先にある扉を開けて入る。
「いらっしゃいませ」
透き通った声が部屋中に響くと、目の前には大きな水晶玉と黒いフードを被った女性が飛び込んで来た。
部屋は薄暗い照明で、ミステリアスな雰囲気を演出している。
(あれ? この感じどこかで……)
時雨はどこか懐かしい気持ちになった。
特に透き通った占い師の声はどこかで聞き覚えのあるような気がしてならなかった。
「ほら、時雨。突っ立ってないで行くわよ」
「あ……ああ、うん」
時雨は曖昧な返事をすると、奥に進んで用意された椅子に着席する。
「ふふっ、可愛らしいお嬢さんですね。占いは初めての経験かしら?」
占い師は時雨に問い掛けると、その声に何故だか緊張してしまう。
「いえ、あります」
占い自体は前世で凛に連れ出されたのをきっかけに体験済みだ。
さすがに前世を持ち出す事はしなかったが、時雨は軽く頷いて答えてみせた。
その様子を占い師は満足そうにすると、口元を緩める。
「そうでしたか。そちらのお嬢さんはどうかしら?」
「占い師さんなら、私が経験済みか占って確かめてみてよ」
加奈は占い師に挑発的な試みをすると、魔法や超能力の類でもない限り、そんなの分かる筈がない。
「加奈、そんな意地悪な事を言って困らせたら駄目だよ」
「私の満足できる答えを持っているかどうか確かめているだけよ」
時雨が小声で注意すると、態度を変えるつもりはないらしい。
占い師は水晶玉に手をかざすと、次に手元に置いてあった分厚い本を開いて加奈の顔を直視する。
「ありますね。薄暗くて鉄格子のある牢屋のような場所ではありませんか?」
これには時雨と加奈も驚いてしまった。
二人共、答えられないと思っていたからだ。
抽象的ではあるが占った場所まで占い師が答えてみせると、加奈は小さく呟く。
「どうしてそれを……」
「どうして? それは占ったからですよ」
占い師は加奈の問いに不敵な笑みを浮かべる。