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第115話 風呂上がり

 温まった身体を解すために、ロビーの休憩室でくつろいでいた。


「牛乳とコーヒー牛乳があるけど、どっちが飲みたい?」


 加奈が自販機で牛乳とコーヒー牛乳をぶら下げて来ると、時雨は牛乳を手に取った。


「ああ、ありがとう。後でお金は払うよ」


 牛乳瓶の蓋を取ると、身体を反って冷えた牛乳を一気に流し込む。

 風呂上がりのこの瞬間は何とも言えない幸福感に包まれる。


「いい飲みっぷりだねぇ」


 加奈も残ったコーヒー牛乳を軽く口にしながら、時雨の飲みっぷりをスマホのカメラで収める。


「急に撮るなんて恥ずかしいよ」


 時雨は飲み干した牛乳瓶を片付けると、飲んでいる最中は撮られる事を意識していないので変な顔になっているのではないかと心配してしまう。


「結構、さまになっているわよ。時雨のお姉さんって元モデルだったし、姉妹揃って絵になるよ」


 撮った写真を見せてもらうと、身体を仰け反って良い笑顔で牛乳を飲んでいる姿があった。

 本職のモデルだった柚子と比べたら見劣りするのは当たり前だが、写真自体は悪くない出来栄えだ。


「加奈の撮り方が上手いだけだよ。私も撮ってあげるから、飲んでいる姿を一枚頂戴」

「よーし、こんな感じでどうかな」


 時雨は自分のスマホを取り出して、加奈がコーヒー牛乳を飲んでいる姿を収めようとすると、加奈はカメラ目線を意識してコーヒー牛乳を飲んで見せた。


(女子力高いなぁ)


 今時の女子高生らしいなと感心しながらシャッターを切ると、丁度そこに凛と紅葉が休憩室に入って来た。

 二人共、火照った顔をしながら椅子に腰掛けると、そのままぐったりした様子だ。


「大丈夫ですか?」


 時雨は扇風機を二人に向けて、心配になって声を掛ける。


「サウナで汗を流していたら、紅葉が勝負を持ち掛けてどちらが音を上げずにいられるか我慢比べをしてたのよ」

「えっ、そんな事をしていたのですか」


 理由を聞くと、時雨は呆れてしまった。

 二人共、従来から負けず嫌いの性格だった事を失念していた。

 受けた勝負は真正面から受け止めるタイプの二人なので、勝負を挑まれたら断れない。

 加奈は急いで自販機からスポーツ飲料水を用意すると、脱水症状の二人に飲ませた。


「サウナは競い合う場所じゃありませんよ。一歩間違ったら死に直結する大惨事になるかもしれませんので、今後は止めて下さい」


 加奈や香に説教をする機会は散々あったが、優等生二人に説教するとは思わなかった。


「「はーい」」


 二人共、熱さで気のない返事をするとしばらく時雨の小言が続いた。

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