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第112話 ハーレム

 時雨達以外にも家族連れの親子等が訪れて中の様子は賑やかだ。

 受付でタオル一式をレンタルすると、脱衣場まで連行されて逃げ道を塞がれる。

 仕方がないので、入浴する決意を固めると、時雨はゆっくりと上着を一枚ずつ脱いでいく。


「ほら、早く脱いで」


 凛は急かすようにすると、いつの間にか裸になってタオルを垂らして胸から下を隠していた。

 加奈は片手で胸を隠しながら、時雨の初々しい姿を面白そうに眺めている。

 紅葉に至っては頭をタオルで巻いているだけで、堂々と裸体を覗かせていた。


「わ……分かりましたから、私に視線を集中させるのは止めて下さい」


 時雨は弱々しく懇願すると、最後の一枚を脱ぎ捨てて凛と同様にタオルで胸から下を隠すと準備を整える。

 視線の優先順位を上から凛、加奈、紅葉と定めて自制心を高めると、騎士道の心掛けを忘れずに臨む。

 そんな時雨を紅葉は痺れを切らして、もたもたしていた様子を咎める。


「ほら、突っ立ってないで早く行くぞ。君も騎士だったのなら、タオルなんぞ巻かずに堂々と振る舞うのが礼節だぞ」


 それができたら苦労はしないと言いたいところだが、ぐっと堪えるしかなかった。

 時雨の正体を承知である事を前提に、紅葉の唱える礼節を実行するのは強靭な精神と鋼のような心臓が必要だ。

 大浴場はとても広い構造で露天風呂や内湯は勿論、サウナ施設も完備されている。

 掛け湯を済ませて露天風呂に浸かると、全身の疲れが内側から癒されていく感覚に陥る。


「凄く気持ちいい」


 時雨は極楽の気分で青い空を見上げると、視界に加奈の顔が映り込んだ。


「あんたは慎重なのか大胆なのか分からない性格をしてるわね」


 呆れた台詞を吐くと、加奈は時雨の隣で湯船に浸かる。

 加奈の言い分は理解できるし、耳を塞ぎたくなる事実だ。


「それは別に……普通だし」

「女騎士様が時雨と友達から付き合い始めたって台詞を吐いた時、明らかにメスの顔になってたわよ。あれは時雨に抱き込まれたって瞬時に分かったし、お姫様も勘づいている」


 それは時雨も感じ取っていたので、このような事態に展開している。


「まさか、学校で噂になっている三股を実際にするとはねぇ」

「ちょっと、何で一人増えているんだよ。私は……凛先輩と紅葉先輩の二人だよ」

「香がいるじゃない」

「香ちゃんは私の弟だし……ノーカンだし」


 明らかに歯切れの悪い突っ込みなのは理解している。

 世間体で言うところの二股と捉えられても文句が言えない状況だ。

 しかも、凛は学校中の女子生徒達から慕われる優等生で、紅葉も一部の女子生徒達に人気のある優等生だ。


「でも、逆に考えたらさ。時雨は誰もが羨むハーレム状態って捉える事もできるよね」

「ハーレムって……こんな気を遣うものじゃないでしょ」

「いや、ハーレムだよ。香も今は時雨と血縁関係がない他人だし、女騎士様は攻めに弱そうだし、お姫様は時雨を元から好きだと思うからハーレムが完成するよ」

「そんな呑気に考えられないよ」


 加奈は時雨の現状を面白そうな玩具を見つけた子供のようにはしゃいで考察すると、折角の温泉気分が台無しになっていく。

 元々は時雨が蒔いた種なのだから自業自得と言われればそれまでだが、あの二人を説得するのは骨が折れそうだ。

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