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旅立ちと旅立ち3

ジュナイド、キアラとご飯を食べたあと、身支度は整えてきたため、宿屋に泊めてもらうことになった。

複雑な王国の事情をしったため、そのまま出発する事を決め、馬の身体に犬の顔が付いたような魔物を荷物運びとして同伴させる以外3人での門出となった。


修行の時は、歓楽街からどんどん遠ざかる方に進んだが、隣国ドルド同盟国は歓楽街側の門から出る方が速いらしく、早朝の静かな道を少し歩くと、建物を抜けた向こう側に石工で出来た3メートル程の門が聳え立っていた。


門番の2名が佇んでいた。


『ジュナイド様お待ちしておりました。』


右側の門兵が、ジュナイドに頭を下げると左側の門兵も頭をさげる。


ジュナイドも軽く会釈で返した。


『開門!』


右側の門兵が指示を出すと門の横に着いたレバーを左手側の門番が回す。


門の重い扉は滑車の原理で上側に自動で開いた。


ジュナイドが馬のような魔物の手綱を引きながら歩いてく。

 

キアラは魔物の背に乗りながら、フードで顔を隠したまま静かにしていた。


俺も新しい地への期待に胸を膨らませつつも、浮き足立つ事なくジュナイドの横を歩く


森林地帯に整備された道が出来ており、それを暫く3人とも無言で歩いていると、ジュナイドが急に立ち止まり、背後を振り向くと門は既に見えないほど歩いていた。


『監視の気配も消えたな。』


『監視されてたんですか?』


『嗚呼、国を出る間にキアラが対立する貴族達と接触する事を警戒したんだろう…。』


『どうしてキアラが?』


『この子は現王の隠し子なんだ。9歳の属性鑑定で分かったらしく、今の王国の現状を考えると王位継承争いに巻き込まれるということで、丁度遠征で国を出る私に託されたということだ。』


『え?』


背が小さくて、5歳ぐらいに見えたが、同い年だったのか。

しかも王の血を継いでいるのか・・・。

そういえば睫毛が長くて気付かなかったが、目元の凛々しさが何となく王の目元と似てなくもなかった。


『私も私が、王の血を引いてるなんてついこの間まで知らなかったけどね。』


『まぁ、それが今回の遠征の最後の理由になる。』


『え、でも・・・キアラさんが9歳って事でいいんですよね?』


『なによ?』


『小さいから5歳くらいに見えたろ。私もだ。』


ジュナイドがフードの中で笑いを噛み殺すのを感じる。


『ええ、本当に歳下だと・・・。』


『ヘクティスは何歳なの?』


『9歳ですが…。』


『9歳…じゃぁ、何月?』


様子を窺うような少し間を開けて答える。


『7月です…。』


『私より2カ月も後ね。よし、私の事はキアラお姉さんて呼びなさい。』


キアラはフードを外すと幼な声を響かせながら、僕を指差して興奮気味に声を荒げる。


案の定、年齢マウントを取られる流れになった。


『それは…ちょっと…。』


『何で、嫌そうなのよ!』


『いいじゃないか。お姉さん呼びするぐらい。』


『は、恥ずかしいじゃないですか…。』


精神年齢が17歳プラス9年の俺にとって明らかに小さい子をおねぇさんと呼ぶことに抵抗があった。


暫くキアラのお姉さんと呼びなさいが連呼され、渋々それに応じた。


ーーーーーーーーーーーー


クランマ・エルはヘクティスの部屋に残された手紙を読み終わると、葉の装飾が綺麗に施されたブレスレットを右手に嵌めた。


ヘクティスがいない事がクランマ自身にとってこんなに不安になるものだと思っていなかった。

今まで当たり前に側にいて、当たり前に触れ合って、当たり前にずっと一緒だと思っていたからだ。


ヘクティスが剣将との修行を終えて帰ってきた時に顔つきや、身体つきが随分変わったと感じた。


一月で自分の知ってる男の子は成長してまった。

それがありありとわかり、今回の遠征でヘクティスが自分の道を進み出す気がし、置いていかれてしまう不安が呼吸を重くするほどに強くなっていく。


『私も変わりたい。』


一人でに漏れた本音はクランマの胸を決意で満たす。


クランマはヘクティスの部屋を出た足で直接目的の部屋に向かう。


裏庭を通り煌びやかな装飾品が飾られた廊下を過ぎると代わりに落ち着いた雰囲気の壁が続く。

来客用の部屋の扉を過ぎ、突き当たりまで廊下を進むと、そこに裁定室があった。

金のプレートが貼られた簡素な扉。


ノックを3回うつ。


『どうぞ。』


中から優しい声が反応するのを確認するとクランマはドアノブを回し扉を開いた。


『失礼します。』


ゴライア・テッサが私室のように使っている属性裁定室に入ると本棚を埋める本の山とは別に大量の蔵書が山積みになっている。

ゴライアは本を読む手を止めて顔を上げる。


『どうしました?』


『以前断ってしまったのですが。私を弟子にしてください。お願いします。』


クランマは9歳の時の属性裁定で木のエレメントと魔力において優れたギフトを発芽させ、ゴライアに声をかけられていた。


『喜んで。』


ゴライアは静かに言葉を受け取ると微笑んだ。

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