ラクス・エクエス
魔力制御が上手く行く試しがないまま、あっという間にクシーフォスへの登校日となった。
ランガの推薦という事で、エクスワイヤ(騎士候補生)見習いの枠で特別編入を許されている俺には劣等感がついて回るのは否めない。
低禮、至開、極域、涅槃。ジュナイドが教えてくれた強さの段階において、極域に一歩踏み込んだばかりの俺が、魔力なしでは、低禮にも劣る事は明白だった。
姉さんが横にいる事が心強くもあり、逆に心苦しくもあった。
クシーフォスの門を超えて、俺と姉さんは一歩を踏み出す。
まだワクワクする気持ちの方が奇跡的に高い。新しい事の始まりに姉さんは迷いなく俺の前を先導する。俺よりも小さいはずの背中を大きく感じながらその頼もしい背について歩いていく。
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『二人とも挨拶して。』
講義堂の様な開けた教室の中、担当教員が短く促す。
10人の男女が興味深けに俺と姉さんの事を見ていた。
『私はキアラ・ヴァル、よろしく。』
『ヘクティス・ヴァルですよろしくお願いします。』
『はーい、みなさ…。』
『ヴァルはジュナイド様の性名だろ?ランガ様の養子だっつー話しじゃなかったか?。』
担当教員の言葉を遮るように講堂に声を響かせたのは目付きの鋭い銀髪の青年だった。
『なんか文句あんの?』
姉さんの悪癖、誰に対しても気に食わなければ、反射的に噛み付いてしまう。
『ああ?』
銀髪の青年は額に血管を浮かせて挑発する様に睨み返す。
『二人とも、落ち着いて。』
『ヴェビス、おまえは黙ってろよ。』
担当教官のフアン・ヴェビスは言葉を詰まらせて、口を噤む。
『姉さん、辞めましょう。』
お互いの目線を遮る様に、間に入り、姉さんと目を合わせる。
『まだそっちの女の方はいいけどよお。お前はだめだろ。才能ねぇよ。』
心底といった声で不機嫌そうな声が講堂にこだます。
『あ゛あ゛?』
その言葉に間髪入れずに姉さんは俺の肩に手を置いてを弾き飛ばすと血管が破裂するのではないかぐらい額に青筋を浮かべてブチギレた。
俺のためにキレてくれたのはわかるが、キレすぎて俺がすでに負傷した。
『あんた名前は?』
『ラクス・エクエスだ。』
傲慢な態度で見下ろしながら即答する。
『ラクス・エクエスに決闘を申し込むわ。』
ハンカチを取り出すと床に投げる。
これはランガのクシーフォス時代、やんちゃしていた頃にやったという決闘の申し込み方だった。ランガが懐かしそうに武勇伝を語っているのをつまんなそうに聞いていたと思ったら、しっかりと姉さんは覚えていたらしい。
『懐かしい…じゃなくて、二人ともそこまでにしてください。』
ヴェビスは弾かれた俺に駆け寄りながらも、二人の仲裁に入ろうとする。
『いいぜ。今すぐに決闘しようぜ。』
エクエスはヴェビスを完全に無視しながら姉さんに尚も挑発的な笑みを向ける。
姉さんも睨むの辞めなかった。




