CARD38
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「影山先輩!」
いつも通り、進学校の生徒とは思えない銀髪にドクロをあしらったシャツ、とんがった靴という出立ちで、彼はこの舞台に現れたのだ。
俺は思いっきりガッツポーズした。そして心の中でつぶやく――そうだよな。大好きな人が困ってるって聞いたら、放っておけないよな。
「いっつも超元気な桜木大先生の、元気無いところが見れるって聞いたから来てみたんだけど」
そんなことを言う先輩。照れ隠し、というふうでもなく、あくまでサラッと言う。どうだ、ようやく救世主のお出ましだぞ、そんな感じ。
「桜木先輩なら、今保健室で休んでますよ」
「え、そうなの。なんだよ」
そう言いながら、先輩は机に置かれたジャッジのタブレットを覗き込んだ。
「お、なに。今一勝一敗ね」
「先輩、グランプリベスト十六の力、見せつけちゃってくださいよ」
「おまえ、馬鹿にしてんだろ」
そう言いながら、席に着く。
「あーデッキは桜木のしか使えないんだっけ」
補欠の選手はどのメンバーとでも交代できるが、デッキまで交換することはできない。
「そうです」
「オレさぁ、【ゴブリン】嫌いなんだよねぇ。かわいくねーし、カッコよくもねーし。練習してねーわ」
まるで「寝てないわー」と自慢する中学生のようにそう言って、しかしその後ニヤリとして宣言する。
「まあでも勝つけどね」
その眼光はしっかり相手を見据える。
「よろしくお願いします」
「よろしくー」
考えてみれば、彼のプレイを見るのは、初めて合った時に戦って以来だ。しかもあの時は、お互い中堅デッキを使ってのデュエルだった。
先輩が試合デッキを使ってガチで戦うのは初めて見る。
「俺のターン」
影山先輩のプレイングは完璧だった。完璧にこのデッキのことを理解してる。
「<騎兵>を詠唱、さらに続けて<騎兵>を詠唱」
幽霊部員とはいえ、カードショップに顔を出しているくらいだ。おそらくデッキの研究もしっかりしているのだろう。
アーツが好きなのか、それとも桜木先輩ののことが好きなのか。
「負けで……」
相手が泣きそうな顔でそう宣言した。
「さぁて、桜木に感謝されに行こうか」
立ち上がった影山先輩は満足げな笑顔を浮かべていた。
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