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CARD34

 ◇


 関東大会前、最後の土曜日。俺たちは部室ではなく、カードショップ集合した。例によって、今日は新弾の発売日だ。

 店に入ると、新弾発売日ということもあってか、かなり賑わっていた。テーブルの対戦席は、新弾のボックスを開封する人たちで溢れている。

「先輩は今回は何箱買うんですか」

「今回は一箱かなー。あ、でも“あれ”が当たらなかったら、もう一箱買うけどね」

 今回の新弾は、再録カードが中心のパックだった。全四十枚のうち、三十枚は過去のパックに収録されたカードの再録だ。新規カードはたった十枚。

 だが、その中には環境に大きな影響を与えるカードがあった。

「あ、あたし当たりました」

「ほんと?」

 今回のトップレアカード。


<繁盛する酒場>

 発動後3ターンの間、相手が召還アーツを使うたびにカードを1枚ドローする。


 効果はたった一文。だが、往々にしてシンプルな効果を持つカードは強いものだ。

 強力なサモンメタ。サモンデッキである【ゴブリン】が支配するこの環境で、このカードの強さは火を見るよりも明らかだろう。

「いいなー」

 なんて言っていたが、そのうち先輩も<酒場>を引き当てる。俺は結局一箱では当たらなかったので、おとなしくシングル買いする。

「さて。デッキ構築どうしようか」

 新弾の発売と同時に、新しい制限カードリストが発表された。

 制限カードとは、強すぎる故に、デッキに投入できる枚数を制限されたカードのことだ。本来同じカードはデッキに三枚まで投入できるが、“準制限カード”は二、“制限カード”は一枚しか投入でず、その上をいく“禁止カード”は、公式デュエルで使用不可となる。

 ゲームバランスをとるために、三か月一度リストが更新され、強いデッキが弱体化することになる。

 今回の制限対象はもちろん、環境を支配している【ゴブリン】だ。デッキのアドバンテージ獲得能力を支えていた<ゴブリンの角笛吹き>と<ゴブリンの召喚士>が二枚とも制限カードに指定された。これで、ほぼ永続的だった【ゴブリン】のアドバンテージ獲得能力が限定的になった。

 だが、それでもなお、ゴブリンデッキは環境トップに居座るだろう。<ゴブリンの角笛吹き>が一枚でもある限り、序盤にアドバンテージを稼ぐ能力は失われないからだ。

 新弾のカードをデッキに投入して、デュエルをしてみる。

 他のデッキに<繁盛する市場>を入れて試してみるが、やはり【ゴブリン】のスピードに追いつかない。

「やっぱり、デッキは【ゴブリン】以外ではありえませんね」

 これまで以上に繊細なプレイングが求められることにはなるが、それでもまだデッキパワーの高さを実感する。次の環境も、どうやら【ゴブリン】環境になりそうだ。

 と、

「いらっしゃませ~」

 視界の奥に、一人の少年。俺の焦点は一気に彼にフォーカスする。

 白河貴文。

 あの大会以来の再開だった。

 だが、

「やあ、優輝くん」

 と、彼はそれだけ言って、立ち止まることもせず、店の奥に行った。帝王が、もはや俺に対する興味を失っているのは明白だった。

 その瞬間。

 あの日の記憶がフラッシュバックする。


 ――残念だよ。


 ギャル子の言葉。

「負けたら悔しい、当たり前じゃん」

 その瞬間、俺の中で何かが再び燃え上がった。

 そうか。

 そうだよな。

 負けたら悔しい。

 負けたくない。

 勝ちたい。

 たったそれだけのことじゃないか。

 意味があるとか無いとか。

 将来役に立つとか立たないとか。

 そんなのは関係ないんだ。

「先輩」

 俺は前向いて宣言した。

「俺、必ず勝ちます」

 それはもはや独白。でも、それでもいい。

「貴文に、必ず勝ちます」


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