CARD32
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「……よく眠れなかった」
昨日の出来事が、頭の中をぐるぐるめぐってしまったのだ。
「夢、じゃないよな」
いつも通り朝食を食べていると、妙に頭が冷静になってきて、昨日のは全部冗談だったんじゃないかという気になってきた。
部屋に帰って着替え、カバンに教科書を詰める。最後にベッド脇で充電していたスマホをポケットに入れようすると、メッセージが入っていることに気が付いた。
姉ヶ崎からだ。
晴夏――もう家出た?
こんな朝からどうしたんだ。
一ノ瀬優輝――いや、まだだけど。
俺の返信に既読は付いたが、返信はなかった。
「なんなんだ……」
だが家を出た瞬間、その謎は一瞬で氷解した。
姉ヶ崎が、家の前の電柱に寄りかかっていたのだ。
「姉ヶ崎、お前どうして」
「いいじゃん。一緒に学校行こうよ」
「うん、まぁいいけど」
俺は困惑しながらも、歩き始める。
「……」
「……」
いつもなら、カードの話とか、もっとどうでもいいこととか、とにかく何か話すことがあるのに。今日は何を話していいのかわからない。
「明日から雨らしいな」
ようやく絞り出した話題が天気。自分でもベタすぎてビックリした。
「うん、らしいね」
本当に気まずい。
電車から降り改札を出ると、当たり前だが、幕張南の制服を着た生徒たちがたくさん学校へ向かっている。その中にはクラスメイトたちもいる。その中で、女の子と二人で歩くのは、とにかく気恥ずかしい。
「なに、お前ら付き合ってんの」
友人の一人がが俺の腕を肘でついてきた。
「たまたま会ったんだよ」
「ふーん」
やつはニヤニヤして、絶対に信じていないとひと目でわかった。
◇




