CARD2
桜の舞い散る校門を抜けて、広大な敷地へと足を踏み入れると、広場の中心でナマズの彫刻が出向かてくれる。その先に七階建ての校舎がそびえ立つ。おしゃれな大学か大手企業の本社のような近代的な建物。これから三年間を過す場所が、この校舎だと思うとそれだけで少し胸が踊る。
この幕張南高校は、一学年二千人を擁するマンモス校だ。公立高校でありながら、部活動が盛んで、施設も充実している。
高校としては珍しく、構内は基本的に土足。なので昇降口は存在しない。ダサい上履きを履くことは二度とないのだ。
校舎に足を踏み入れると、ピカピカの制服に身を包んだ新入生たちの群れが、エレベーターホールを占拠していた。
一年生の教室は、上のフロアに集中している。パンフレットによれば、俺のクラス、一年十七組の教室は校舎七階の一番上にあるようだ。中学三年間帰宅部だった俺に、七階まで階段で登るだけの体力はない。素直に俺もエレベーターを待つ群れに加わることにした。
当然だが周りにいるのは知らないやつばかり。それを誤魔化すように、時々無意味に携帯をいじりながら待つこと数分。ようやくエレベーターに乗り込むことができた。四階までは順調に進むが、五階からは各駅停車。校舎がオシャレなのは結構だが、これは移動に苦労しそうだ。ようやく七階までたどり着く。
俺はスクールバッグを背負い直し、自分の教室へと歩いて行く。一抹の不安を抱きながら、教室に入る。既に半分くらいの生徒が集まっていた。仲良さそうに談笑しているやつらは元々友達だったのだろうか。もちろん、席で一人携帯の画面や配られていたパンフレットを眺めているやつもいる。
黒板に貼られた、それぞれの席が書かれた表に、知り合いは一人もいなかった。俺の席は、窓際の一番前。席に向かうと、既に前後左右の生徒は既に席についていた。
中でも、一つ前の席の女子生徒が異様に目立っていた。
明るめの茶髪。化粧。この前まで中学生だったとは思えない。幕張南高校は比較的校則がゆるいことで有名が、入学式の日に茶髪・化粧は、さすがに目立つ。
だが、そんなことより、気になることがあった。
彼女の机に置かれているものが、ギャルとは結び付かないものだったのだ。
それは――乾パンの袋。彼女は袋から右手で次々口に運んでいる。ザクザクという音が響く。
どうしたんだこいつ……なんで乾パン食ってんだ。聞きたかったがもちろん話しかけたりはしない。
代わりに後ろの席の男子に声をかける。どこ中だとか、高校の時何部だったとか、当たり触りのない会話を続けているうち、いつのにかクラスメイト四十人全員が教室に揃った。そして、八時半五分前に担任の教師も教室に入ってくる。
「みなさん、おはようございます」
若くて感じが良い、女の教師。特別美人、ってわけじゃないけど、愛嬌はある。
「みんなあつまってるねー。じゃぁちょっと早いけどホームルームを」
さあ、いよいよ俺達の高校生活が始まる――その時だった。
突然、彼女はやってきた。




