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CARD1

 汗の匂いがした。

 動かしてるのは両手と、そして頭だけだ。それでも、俺も貴文も汗をかいていた。

 空調はしっかり効いている。かいた汗に冷風が当たって冷たい。

 幕張。その憧れの舞台。ホール中心、スポットライトに照らされたテーブルに展開されたカードたち。

 左右に控える三人のジャッジと、数千人の観客、そしてカメラを通して観戦している数万人の視聴者たちの視線を肌で感じる。

 でもそんな赤の他人の視線はどうでもいいのだ。

 俺の敵はただ一人。この目の前の少年。常勝無敗のこの気高い白河貴文。彼を倒すために、これまでのすべてがあったのだ。

 勝負はここまで全くの互角。一進一退で進み、後一撃を先に仕掛けた方が勝ちというところまで来た。

 だがお互いにカードを使い果たしてしまっている。お互いの手を全て潰しあった、まさに死闘だった。

 ここまで来たら、もう後は自分の右手を信じるしかない。

 手汗が止まらない。

 この一年間の全てが、次の一枚にかかっている。

 デッキトップに触れる。

 中指と人差しが手繰り寄せた一枚。

 その運命のカードが――


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