ポニーテール
初めまして。
以前似た内容で投稿していましたが、修正版として投稿します。
桜の木から落ちる木漏れ日を受けながら、心地よい春風を浴びつつ、
落ちた桜の葉でピンク色になった坂を自転車で下っていく。
新しい学生生活に心を躍らせながら学校への道をなぞっていく。
と、言いたいところだが、実は俺は電車通学だ。
電車の中でガタンガタンと無表情の音を聞きながら、慣性を感じつつそれには向かうように全身に力を入れる。
ああ、そうだ。遅刻しそうになって走って、曲がり角でドンということも、駐輪場で愛しのあの子にキュンってこともない。
ではなぜ俺が電車通学を選んだのか。
それは、なるべく離れた高校がよかったからだ。
別に中学でいじめられたわけでも、とても痛い人間だったわけでも、好きなあの子に振られたわけでもない。
そう、理由を端的にいうと、
--好みの子がいなかったからだ--
なら別に近くの高校でもよかったのではないか?
と、思う人がいるかもしれない。
冷静に考えてほしい。近くの高校ということは、同じ中学の奴がいるかもしれないということだ。
つまり、その分新しい出会いの芽を摘んでしまうということ。
こんなことはあってはならないのだ。
周りの男友達には笑われた。女友達は、なんかちょっと怒ってた。
だがそんなことはどうでもいい。
なぜならやつらはもういない!
新しい高校生活へと放たれたのだから!
ガラガラ
教室の扉を開け、一歩踏み込んだ。
クラス中の視線を感じた。
落ち着け神谷自道!ファーストコンタクトが大切だ!ここは明るく・・・
「皆!おっはy」
ズコー!
し、しまった!張り切りすぎて転んだ!
クラス中からクスクスと笑い声が聞こえた。
「いっててて・・・。」
「ププッ、アハハハハハ!」
ん?誰だこんなにも豪快に笑いやがってんのは・・・。
一番後ろの右からの三番目の席の女と目があった。
「なんだ・・・?あのポニーテール・・・。」
「はぁー、ゴメンゴメン!おかしくってつい!」
デリカシーのかけらもない奴だ・・・。
恥ずかしさをこらえながら黒板に書いてある自分の席を確認した。
「んーと、壁際前から2番目・・・。」
なんとまあ微妙な位置だろうか。
もっとこう、窓際の後ろ側とか・・・。
そんなことを考えながらとぼとぼと自分の席であろう椅子に腰を掛けた。
10分ほどたっただろうか。続々とクラスの奴が集まる中、先ほどのポニーテールはこちらをチラチラみては笑っている。
そんな時、ドアが開いた。
「よーし、皆いるかー。」
その担任と思わしき人物、20後半ぐらいの女性だ。
「このたび、この1-2を担当することになった、園田しおりだ。しおりんとでも呼んでくれ。」
クラス中に静寂が走った。
「・・・、つまんね。」
しまった、声に出ていた。
「ほほう?貴様・・・、神谷だな?入学式のあと職員室にきなさい。」
ただならぬ殺気を感じた。
何とかしてこの場の空気を変えないと・・・。
「やだなぁーもう!冗談じゃないですか!しおりーん!」
「私をバカに・・・」
火に油を注いでしまった!
「ププ」
後ろのほうから何度か俺にかけられた笑い声が聞こえた。
先生はゆっくりとその声のほうを見た。
「・・・、美原か・・・。お前も一緒に来るように。」
ポニーテール、その美原という女は酷くおびえた様子で声を上げた
「えぇ!そんな!この程度で大人げないです!」
「そうですよ!しおりん!」
キーンコーンカーンコーン
無慈悲にも、俺たちの言い分を妨げるように、入学式のチャイムが鳴った。
「分かった。言いたいことは職員室で聞く。とりあえず入学式に行くぞ。」
やってしまった。初日から何をやっているんだ俺は・・・。